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2023.12.01 08:00

【オスプレイ墜落】原因の徹底究明が不可欠

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 危惧された事故が起きてしまった。行方不明者の救助に全力を挙げるとともに、事故原因の徹底究明と情報の公開が求められる。飛行を再開するには再発防止の取り組みを明確にする必要がある。
 鹿児島県・屋久島沖で、米空軍輸送機CV22オスプレイが墜落した。搭乗員は8人で、1人の死亡が確認された。日本国内でオスプレイ事故で死者が出たのは初めてだ。行方不明者の救助、捜索が続いている。
 オスプレイは主翼両端のプロペラ角度を変えることで、垂直離着陸ができる。長い滑走路が必要なく、高速で長距離の飛行が可能だが、開発段階からトラブルが相次いだ。海外では死亡事故が起きたほか、国内でも不時着、大破する事故があり安全性への懸念が根強い。
 墜落した機体は、米軍岩国基地(山口県)から嘉手納基地(沖縄県)に向かう予定だった。レーダーから機影が消失し、屋久島沖で機体の残骸とみられる物体や無人の救命ボートが発見された。墜落の直前に左エンジンから火が出ていたとの目撃情報がある。原因究明には、海底に沈んでいるとみられる機体の発見と回収が重要となる。
 現場海域では漁船が行き交っていた。爆音は島内にも届いた。住民への直接の被害がなかったのは幸いだが、同様の事故がまた起きるのではないかと心配を募らせるのは当然だ。他の基地周辺や飛行する地域でも、危険にさらされていることが改めて意識されている。
 高知県上空は米軍の低空飛行訓練コース「オレンジルート」にあり、米軍機の飛来に住民から不安と怒りの声が上がる。オスプレイが住宅密集地の上空を飛行するのが目撃されている。人ごとではない。
 陸上自衛隊のオスプレイは佐賀空港に配備が計画されている。台湾や沖縄・尖閣諸島を巡る緊張が高まることを背景に、南西方面の島しょ防衛能力の構築を目指す。
 現状は木更津駐屯地(千葉県)に14機が暫定配備、運用されているが、空港隣接地に併設する新駐屯地に移駐する予定で、6月に着工した。離島防衛専門部隊の輸送へオスプレイ17機などを配備する。
 地元では配備受け入れへの賛否が割れ、移設を急ぐ工事への不安も強いようだ。そうした中での墜落だけに、丁寧な対応をとらなければ住民同士や行政との溝を深めかねない。機体の安全性への信頼が一段と損なわれたことを重く受け止めた対応が求められる。
 陸自は事故状況が明らかになるまで当面の間オスプレイの飛行を取りやめる。ただ、政府は佐賀配備計画を変更しない考えを示す。
 安全保障環境が厳しくなる中、防衛力強化への意識は高まっている。南西諸島防衛の能力を向上させるには、その必要性を繰り返し説明することが欠かせない。そこでは、機材の安全性を不安視する人々の思いに寄り添うことも重要なはずだ。在日米軍との連携強化が先走っていてはかえって信頼を失いかねない。

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