2023.11.29 08:00
小社会 干し時干され時
日本の干し柿は昔から欧米でも評価が高かったらしい。1904(明治37)年に米国で開かれたセントルイス万博ではいまの岐阜県美濃加茂市産の品が出され、「金牌(きんぱい)」を受賞している。
万博は各国が技術や産業をアピールする場として19世紀に始まった。明治政府も「西洋技術の導入と輸出市場の開拓をねらって積極的に万国博に参加」(平凡社「大百科事典」)。干し柿もその一つだった。
古き良き時代にも映るが、いまと違って当時は外国の情報が入りにくかった。各国の逸品が並ぶ万博は、いまよりはるかに刺激的だったろう。万博を誘致した国が大金を投じて開催を成功させるのも、国力を示す好機だったはずだ。
日本で初開催された1970年大阪万博も、まだそんな時代だったかもしれない。ただ世界の情報があふれ、往来も増した昨今はさすがに費用対効果が問われる。2025年大阪・関西万博。2350億円に膨らんだ会場整備費とは別に約837億円の国の負担が必要と判明した。
岸田首相は「ごまかす意図はない」と釈明したが、何かにつけ不透明だから支持率も下がるのでは。渋柿は十分干すと渋みが抜け、甘くなって食べ時になる。政治は丁寧な説明を渋り、甘さが際立つようになると、干され時となる。