2023.11.22 08:00
【大麻グミ問題】いたちごっこに歯止めを
医薬品医療機器法に基づき、来月2日から所持や使用、流通が禁止される見通しだ。HHCHは「リラックスできる」などとしてグミのほか、電子たばこのリキッドなどにも使われ、販売されていた。
先月あたりから、HHCH入りとみられるグミを食べて救急搬送される人が増加。厚労省は製造・販売業者への立ち入り検査やグミの成分分析などを重ねている。
迅速な対応に映るが、それは同時に大麻の類似薬物を巡る問題の深さも物語っている。法規制をしても、すぐに新たなものが流通し、規制が追いつかない「いたちごっこ」の様相を見せているからだ。
大麻取締法で規制されている大麻の有害成分にTHC(テトラヒドロカンナビノール)がある。幻覚作用や記憶障害、学習能力低下などをもたらす薬物だ。
このTHCの化学構造を一部変えた合成化合物がTHCH(テトラヒドロカンナビヘキソール)で、今年8月に指定薬物に指定されるまでグミやクッキー、リキッドなどとして流通。今回と同様に体調不良を訴える人が相次いでいた。
THCHが規制されたためだろう。代わって目立ち始めたのが、別の合成を施した今回のHHCHで、関連商品が通販サイトなどでも売られていた。
大麻類似薬物を巡っては、昨年と今春も複数の有害な合成化合物が指定薬物に加えられている。いたちごっこが懸念されるゆえんだ。
大麻は合法的に医療に使われ、嗜好(しこう)品としての利用が認められている国もある。ただ乱用すれば薬物依存や健康被害を招き、覚醒剤などのさらなる違法薬物への入り口になりかねない。
さらにその大麻に似せた有害物質は健康被害に加え、大麻に親しみを覚えたり、違法性への感覚が薄れたりする恐れが否定できない。いたちごっこを繰り返すうちに、より強力な有害薬物が出回らないかという不安もある。
厚労省は化合物を個別に指定薬物に指定するのではなく、類似した構造の化合物をまとめて禁止する「包括指定」も検討している。引き続き緊張感を持った対策を求める。
一方で、大麻由来の成分でも法規制の対象になっておらず、精神作用や中毒性もないとして世界的に広く使われているものもある。そうした物質と指定薬物は分けて捉える必要があるが、現状はその判断さえつかないほど情報が不足している。
行政はしっかりとした監視はもちろん、国民への情報提供や注意喚起にも力を入れてほしい。
私たち消費者の意識も大切だ。安全な成分かどうか分からないのに興味本位で口にしたり、人に勧めたりするのは絶対に避けたい。