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2023.11.16 08:00

小社会 「らんまん夫婦」のゴジラ

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 いったい「ゴジラ」とは何だろうか。なぜ私たちはゴジラという凶暴な怪獣に興味を持ち続けているのか。悲劇の鑑賞は恐れと哀れみの感情を人々に呼び起こす。感情の高まりが、むしろ心を浄化していく。そうした作用を哲学者アリストテレスは「カタルシス」と呼んだ。

 上映されている「ゴジラ―1.0(マイナスワン)」もまたゴジラがもたらすカタルシスに支配された作品だ。物語設定も実に残酷である。敗戦直後の日本。ようやくの復興を遂げている東京の中心部にゴジラが上陸するのだ。

 主人公の敷島を演じるのは神木隆之介さん。特攻隊の生き残りとして復員するが、戦争によって両親は亡くなっていた。失意と孤独の中で敷島は、幼い子どもを抱えた浜辺美波さん演じる典子と出会う。典子と子どもは敷島の仮設の住まいに転がり込んでくる。

 3人の生活は「らんまん夫婦」の長屋暮らしのようだが、様相は全く違う。敷島に「万太郎」の笑顔はない。それでも典子たちとの生活というものが、敷島の生を支えていく。

 やがて東京の街も活気を取り戻して敷島も家を普請した。その直後にゴジラが現れたのだ。駐留米軍や日本政府が無策に陥る中で、元軍人たちがゴジラに立ち向かうことになる。敷島も飛行機乗りとして志願する―。

 大いなるカタルシスを味わいながらも晴れやかな気分に終わるのは、ゴジラが荒唐無稽な存在にとどまっているからだろう。

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