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2023.11.14 08:00

【財務副大臣辞任】首相の姿勢が問われる

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 税金の滞納を繰り返していながら、納税を求める側にいるのは納得されず、資質が問われて当然だ。問題が表面化しても居座り政治不信をさらに強めた。早期に更迭しなかったことで岸田文雄首相の指導力に対する疑問が深まる展開になった。
 過去の税金滞納が発覚した神田憲次財務副大臣が辞任した。2013年から22年にかけ、自身が代表取締役を務める会社が保有する土地・建物の固定資産税を滞納し差し押さえを4回受けたことを認めている。
 納税の督促状への対応などは事務所スタッフに任せていたと釈明し、当初は辞任しない意向を示していた。しかし、差し押さえが4回にもなると、言葉通りには受け取りにくい。野党は攻勢を強め、今後の国会日程をにらみ自民党内にも辞任論が強まっていた。
 先の通常国会で成立しなかった法案の審議入りのめどが立たず、問題が長引けば23年度補正予算案の月内成立が難しくなる。政権への打撃を考えれば辞任回避で乗り切りたかったはずだが、内閣支持率が低迷する中、早期に沈静化しないと深手を負いかねないと判断したのだろう。
 9月の内閣改造からでも、女性問題で文部科学政務官、公選法違反事件絡みで法務副大臣が立て続けに辞任している。この約2カ月で政務三役3人が辞任する事態となった。
 第4派閥の領袖(りょうしゅう)として衆院選勝利と自民党総裁再選をもくろむ首相としては、内閣改造と党役員人事は派閥のバランスを意識せざるを得ない。そうした対応にほころびが生じ、「適材適所」を掲げた首相の任命責任が問われている。求心力が低下すれば政権の立て直し戦略も遠のいてしまう。
 首相は物価高から暮らしを守るとして経済対策に減税の方針を打ち出した。これで支持率の回復を図り、年内の衆院解散・総選挙を意図しているとの観測が浮上した。
 ところが世論は好感するどころか冷ややかな反応を見せた。定額減税などは6割が評価せず、内閣支持率は3割を割り込んだ。首相は年内解散を見送る方向へ追い込まれた。
 政権浮揚が首相の期待ほどには進まないのは、首相の姿勢が定まらないまま、行き当たりばったりの対応をする印象を与えているからだろう。税収の増収分の還元と位置付けた減税も、増収分は既に国債の償還などに充てて残っていないことが明らかになった。
 防衛費の増額や少子化対策の追加財源を巡り負担の増加が見込まれるが、防衛増税を打ち出して先送りするなど、財源の確保策は判然としない状況にある。財政も国債の増発で悪化が避けられない。
 ちぐはぐな対応が際立ち、それを説明する首相の言葉もうまく届かない。国民が厳しいまなざしを向けていることを真剣に受け止め、信頼の回復に努めることが不可欠だ。
 短期間で政務三役3人が辞任に至る人事は、自民1強の弊害が噴き出したようにも見える。緊張感を失ってはならない。

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