2024年 05月02日(木)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

2023.11.12 08:00

【武器輸出拡大】国民の前で議論せよ

SHARE

 戦後の日本が掲げてきた「平和国家」としてのありように関わる重大政策をまたもや、国会で十分に議論することなく変更するつもりなのだろうか。そうなれば国会の軽視にほかならず、政治の劣化と批判されても仕方があるまい。
 自民、公明両党は「防衛装備移転三原則」とその運用指針の見直しを巡り、地対空ミサイルなど防衛目的の武器の輸出解禁を議論する方向で検討に入った。武器輸出は国際紛争を助長するだけでなく、憲法が禁じる他国の武力行使との一体化になる恐れもある。到底、国民の理解は得られまい。
 安倍政権は2014年、武器や関連技術の輸出を原則禁じた「武器輸出三原則」を転換。現行の三原則で安全保障上の協力関係にある国を対象に救難、輸送、警戒、監視、掃海の非戦闘5分野に限って武器輸出を認めた。
 共同開発・生産を除き、殺傷能力のある装備品は非戦闘分野でも輸出できないという解釈は、際限のない輸出拡大を防ぐ、最低限の歯止めだったといえる。
 ところが、岸田政権は昨年12月に決定した安全保障関連3文書で、ルール見直しの検討を明記。与党協議が始まると、武器を搭載した装備品の輸出も可能と、にわかに説明を変えた。国民への説明もなく、水面下でなし崩し的に解釈を変更したとみられる。
 今回明らかになった検討課題は、武器輸出に前のめりな政府・与党の姿勢を一層あらわにした。
 殺傷能力のある武器を搭載しても非戦闘5分野に該当すれば輸出を容認するほか、戦闘機を撃ち落とす地対空ミサイルなども解禁を検討。殺傷能力がない装備は全面的に認める方向で調整するという。
 これでは輸出条件の緩和にとどまらず、根本的な方針転換というほかない。特に地対空ミサイルなどは、実務者が7月にまとめた論点でも触れておらず、唐突感が否めない。
 同時期の世論調査では、殺傷能力がある武器の輸出を「認めるべきではない」との声が6割を超えていた。批判を恐れ、国民の前での議論を避けたかのように映る。
 政府は装備品輸出を望ましい安保環境を築く「重要な政策的手段」と位置付けるが、たがが外れればリスクは当然膨らもう。武器供与で日本が戦闘に加担したと見なされ、かえって日本周辺の緊張を激化させる恐れもある。
 そうした影響をどこまで検討したのか。政府の方針に近い有識者、与党など内輪の議論を重ねて閣議決定したところで、国民には全く見えてこない。国民の代表である国会で開かれた議論をする過程は、民主主義では極めて重い意味を持つ。
 岸田政権はこの2年、安保や原発などの重要政策について、野党が批判する「密室協議」を多用する形で方針を転換してきた。国民が求めるのは、形式的な手続きの丁寧さではない。理解を求める姿勢を欠いたままでは、不信はさらに高まろう。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月