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2023.11.12 08:00

小社会 海を見るたび

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 海や山などに散骨する自然葬への理解を進める「葬送の自由をすすめる会」という団体がある。初代会長だった安田睦彦さんが先日亡くなったと知り、25年前の取材を思い出した。

 「高知で自然葬をしたいと言う人がおる。東京の人やが、どうしたもんかと」。知人からそんな問い合わせがあった。自然葬の知識はなかったが、同会高知支部の連絡先を調べて伝えた。

 その東京の男性は、母親から「自分の遺灰は土佐沖に」と遺言されていた。明治生まれの元教員で「しつけは厳しかったが、自由に好きに生きなさいとよく言っていた」。晩年に四国遍路をしていた時、高知の海にと決めたらしい。

 別の家族の自然葬も見させていただいた。白いものが波間にさっと広がり、沈む。ある男性は「これから海を見るたびに母親を思い出す。いつどこの海を見てもね」。高知市の女性は、夫を弔った相模灘の海図を前に人生を語ってくれた。

 自然葬は合法か違法か。法律家の意見も違っていた中、安田さんらは「節度を持って行われる限り問題ない」との国の見解を得て活動してきた。

 墓で眠るにせよ、そうではない道を考えるにせよ、どう葬られたいか、葬送の自己決定権が大事ではないかと安田さんは訴えた。取材当時に思ったほど自然葬は増えていないが、それでもこの30年ほどで同会が関わった自然葬で付された人は5千人に近い。今現在、高知には十数人の会員がいる。

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