2023.11.12 08:00
小社会 海を見るたび
「高知で自然葬をしたいと言う人がおる。東京の人やが、どうしたもんかと」。知人からそんな問い合わせがあった。自然葬の知識はなかったが、同会高知支部の連絡先を調べて伝えた。
その東京の男性は、母親から「自分の遺灰は土佐沖に」と遺言されていた。明治生まれの元教員で「しつけは厳しかったが、自由に好きに生きなさいとよく言っていた」。晩年に四国遍路をしていた時、高知の海にと決めたらしい。
別の家族の自然葬も見させていただいた。白いものが波間にさっと広がり、沈む。ある男性は「これから海を見るたびに母親を思い出す。いつどこの海を見てもね」。高知市の女性は、夫を弔った相模灘の海図を前に人生を語ってくれた。
自然葬は合法か違法か。法律家の意見も違っていた中、安田さんらは「節度を持って行われる限り問題ない」との国の見解を得て活動してきた。
墓で眠るにせよ、そうではない道を考えるにせよ、どう葬られたいか、葬送の自己決定権が大事ではないかと安田さんは訴えた。取材当時に思ったほど自然葬は増えていないが、それでもこの30年ほどで同会が関わった自然葬で付された人は5千人に近い。今現在、高知には十数人の会員がいる。