2023.11.09 08:00
【ガザ戦闘1カ月】停戦へ足りない国際協調
特に激しい空爆に加え、イスラエルが地上侵攻も進めるガザは深刻な状況にある。犠牲者は1万人を突破したとの情報があり、多くを子どもや女性が占める。
国連の機関によると、平均して10分に1人、子どもが死亡しているという。グテレス事務総長は「ガザが子どもたちの墓場になりつつある」と訴えている。
ハマス側もイスラエルから連れ去った多くの人質を解放しておらず、沈静化は厳しい情勢だ。ガザでの戦闘が激しくなれば、その人質の命も危うくなりかねない。
このままでは犠牲者が増え続ける。一刻も早い人質の解放や停戦が求められる。その実現へ国際社会も協調を急ぎ、双方へ説得を強める必要がある。
戦闘はハマスによるイスラエル側への奇襲、民間人の連れ去りによって始まった。断じて許されない行為であるのは言うまでもない。
だが、イスラエルの報復の在り方にも疑問を感じる。連日のガザへの攻撃で、住宅や病院なども破壊。民間の犠牲者数はイスラエルの何倍にも達しているとみられ、「虐殺だ」との批判が強まっている。
これに対し、極右政党も入った右派の連立政権を率いるネタニヤフ首相の姿勢は強硬だ。ハマスの一掃を掲げ、停戦にも否定的な姿勢を示している。
問題は、親イスラエルの米国も、停戦はハマスを利するとの考え方に立っている点である。米国への批判も強まっている。
こうした米国の姿勢に、米国と中ロの対立も加わり、国連安全保障理事会は機能不全に陥っている。停戦を求める決議案などが提出されたが、拒否権の行使でまとまらなかった。国際社会に失望の声が広がったのは当然だ。
そんな中、先進7カ国(G7)が東京で外相会合を開催。ガザへの人道支援を可能にするために、戦闘の「人道的休止」への支持で一致した。イスラエルとパレスチナが共存することが平和につながる唯一の道だとの立場も共有した。
ただ、「休止」は「停戦」には程遠く、一時的に戦闘を見合わせる意味合いになる。米国の主張に歩調を合わせた格好だ。
戦闘がいっときでも止まるのなら、まずは実現性の高い休止を急ぐべきだとの考え方もできる。しかし戦闘が再開されれば、住民がまた危機に陥りかねない。アラブ諸国なども即時停戦を求めており、温度差は大きい。
いずれにせよ人道危機解消へ国際協調が不足している。世界各国が足並みをそろえ、イスラエル、ハマス双方に粘り強く停戦を呼び掛ける必要がある。各国が政治的思惑ではなく、人質や住民の視点に立って進めなければならない。