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2023.11.08 16:22

「運命に立ち向かう悲劇を描いてきた」 新作「サタデー・フィクション」公開ロウ・イエ監督 

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 「撮影中にはスタッフ会議を開いて、役者たちに考えを話してもらいながら進めます」と話すロウ・イエ監督

 「個人の意志で運命に立ち向かうが失敗する、そういう悲劇をこれまで描いてきました」。天安門事件を題材にするなど、時に社会のタブーに挑んできた中国のロウ・イエ監督。新作「サタデー・フィクション」では、日米開戦直前の上海を舞台に、組織の歯車から脱しようと試みる女スパイを描いた。(取材・撮影=共同通信 鈴木沙巴良)


 1941年12月、蘭心大劇院での舞台に出演するため上海入りした人気俳優ユー・ジン(コン・リー)には、日本軍に捕らえられた夫を救うという真の目的があるとささやかれている。しかし、実は彼女はフランスの諜報部員に育てられたスパイ。同じホテルに滞在する日本の海軍少佐・古谷(オダギリジョー)を標的に、ある計画が進められていた。


 父が俳優、母が上海戯劇学院の先生という演劇一家で育ったロウ・イエ監督。幼い頃は蘭心大劇院で仕事をする親によく付いていった。舞台を下りた役者が化粧を落として現実に戻っていく姿に強い印象を受け、虚実が入り交じる感覚が本作にも影響したという。


 モノクロで撮られた世界は、現実なのか劇中劇なのか曖昧で、人物も二面性を持っている。クライマックスとなる凄絶な銃撃戦の果てに、ユー・ジンが決定的な選択をしていたことが明らかになる。


 独自の世界を支えるのが、虚実をまたぐ長回しのショットだ。「長回しを使う一番の理由は、役者の『本当にリアルな感じ』を引き出すため。カットをかけず、ドキュメンタリーのように、役者の動きに合わせて撮っていく」


 出身地の上海を舞台に映画を撮るのは「パープル・バタフライ」(2003年)以来。特別な感慨があるという。「少年の頃に時間を過ごした場所で映画を撮ることができ、一つのことを完成させられたと感じています」

(c)KYODONEWS

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