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高知新聞PLUSの活用法

2023.11.07 08:00

【AIのルール】安心して利用できてこそ

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 人工知能(AI)の急速な進歩に対し、遅れている感があったAI技術のリスク対策がようやく加速してきたようだ。
 先進7カ国(G7)が文章や映像を自動作成する生成AIについて、開発者向けの国際指針と国際行動規範に合意した。利用者向けルールの策定作業も進めている。
 英国では「AI安全サミット」を英政府主催で開催した。AIの安全性やリスク管理を主眼とした初のサミットで、参加各国がAIの悪用防止へ国際連携を強める認識で一致。「AIの安全に関するブレッチリー宣言」を発表した。
 AIは利活用に期待が高まる一方で、安全性や倫理面の不安が尽きない。安心して利用できてこそ利活用の可能性も広がるというものだ。各国が協調し、しっかりとしたルールを構築していきたい。
 昨年、生成AIの一つ「チャットGPT」が発表され、日本でも企業や官庁、学校、個人に利用が広がった。別の生成AIも相次いで登場しており、高度なAI技術が一気に身近な存在になってきた。
 ただ、生成AIは偽情報や個人情報を拡散したり、著作権を侵害したりする懸念がある。利用者の求めに応じて武器や危険な薬品の作り方を指南したり、犯罪に利用されたりする恐れも指摘されている。
 G7では、ことし5月の首脳会議(広島サミット)で国際的なルール作りの枠組み「広島AIプロセス」が発足。議長国日本の主導で論議を重ねてきた。
 合意した国際行動指針では、開発側に、AIの能力や限界を示して透明性を確保する▽リスク軽減への適切な措置▽重要な情報の共有や報告▽個人情報や知的財産の保護―などを求めている。
 指針を作るだけでなく、今後は実効性を持たせる制度の在り方も論議する必要があろう。その際に重要になるのが、日米欧以外の国も巻き込んでいけるかどうかだ。
 その点でAI安全サミットには、西側諸国だけでなく中国も参加し、宣言に合意した。中国はAI技術大国の一つであり、その存在は無視できない。今後も多くの国と協調する取り組みが欠かせない。
 こうしたルール作りの外側で、国家が主導してAIを搭載した兵器を開発するなどの動きが出てくる恐れもある。民間規制だけでなく、AIの平和利用を徹底する論議も必要である。
 もちろんAIの健全な開発研究を阻害することがあってはなるまい。米欧では既に、法や大統領令で開発企業を規制・監視しようとする動きが強まっている。企業からは「競争力がそがれる」といった反発の声も聞かれる。その観点でも国際的な論議が求められる。
 日本政府は5月、AIの国家戦略や利活用のルールを検討するため、有識者による「AI戦略会議」を設置し、論議を進めている。国内でもAIの在り方を社会全体で考えていきたい。

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