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2023.11.06 08:00

【薬物事件対応】日大は責任を明確化せよ

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 作家の林真理子氏を理事長に迎えて改革姿勢を強調してきたが、実態はその途上どころか、ほとんど足踏み状態だったのか。学生や卒業生の困惑、怒りの声が聞こえてくるようだ。
 日本大アメリカンフットボール部の薬物事件を巡り、大学側の対応を検証した第三者委員会が報告書を公表し、林理事長ら運営体制を「事実を矮小(わいしょう)化し、時にはないものとする不適切な姿勢があった」と断じた。信頼回復はさらに遠のいたと言わざるを得ない。
 アメフト部ではことし8月に3年生部員が大麻所持容疑などで、10月には大麻を密売人から購入した容疑で4年生部員が逮捕された。警視庁は複数の部員を任意聴取している。若者に薬物汚染が広がり、他大学の運動部でも逮捕者が相次ぐ中、教育機関のコンプライアンス(法令順守)やガバナンス(組織統治)が問われているといってよい。日大はそこで決定的に対応を誤った。
 第三者委は、昨年10月以降に寄せられた複数の大麻疑惑を検証した。それによると昨秋、部員1人が大麻の使用を申告したが、部の指導陣は詳しく調べもせず厳重注意とし、競技スポーツ担当の沢田康広副学長に報告しなかった。
 沢田副学長はことし7月、独断で寮での荷物検査を実施。植物片などを発見したものの、すぐに警視庁に届けず、12日間保管していた。発見から7日後に報告を受けた林理事長も、学内規定に基づく理事会への報告を怠っていた。関係者が各段階で職務を果たさず、危機対応の基本である情報共有さえできていない状況が浮かび上がる。
 ゆがんだ判断に伴う対応は、1人目の部員逮捕後に開かれた記者会見でも露呈した。沢田副学長は警察に届け出なかった「空白の12日間」について「自首させたかった」と教育的配慮を強調した。極めて不適切な判断ながら、林理事長も同調し「隠蔽(いんぺい)とは一切思っていない」と批判を突っぱねた。
 第三者委はこの対応を「常識から乖離(かいり)した独自の判断基準」によるとした上で、「隠蔽体質を疑わせ、信用を失墜させた最大の原因」と批判する。その通りだろう。
 報告書は一連の判断の背景を「得られた情報を都合よく解釈し、自己正当化の姿勢が顕著」だと指摘した。穏便に済ませて責任を回避しようとする姿勢がガバナンスを崩壊させ、さらなる事態の悪化を招いたということだ。
 日大ではアメフト部の「悪質タックル」問題に始まり、田中英寿前理事長のワンマン体制下で背任事件や田中氏の脱税事件など不祥事が続いた。運営体制が変わっても、大学再生への兆しさえ見えない。
 第三者委は改善策として「人事や処分を学内で議論すべきだ」としながら、具体的対象の言及は避けた。大学の自主性を尊重したのか、変われない姿にあきれたのか。いずれにしても、責任の所在を明らかにしなければ体質改善は進まない。

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