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2023.11.05 08:00

【海自のセクハラ】被害者に寄り添う対応を

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 海上自衛隊で昨年、20代の女性隊員が同僚からセクハラ行為を受けた上、拒否したにもかかわらず、加害者と面会させられていたことが判明した。女性隊員は退職を余儀なくされている。
 被害は、陸上自衛隊の元隊員が実名で性被害を訴えたのをきっかけに、防衛省が全自衛隊を対象としたハラスメントの「特別防衛監察」を進めていた時期と重なる。組織の根深いハラスメント体質とともに、不適切な対応をとった運営上の問題も浮かび上がる。
 防衛省によると、西日本の部隊に所属していた女性隊員は昨年8月から12月ごろにかけ、階級が上位の同僚に背後から抱きつかれたり、性的な発言をされたりするなど繰り返しセクハラ被害を受けた。
 女性は上司に相談し、所属部隊の幹部は同11月時点で被害を把握していたが、上級部隊に報告していなかった。女性は先輩隊員にあらためて相談。再度報告を受けた幹部が加害者に事実確認のため面談した際、会うことを拒否する女性に直接謝罪させた。
 幹部はさらに、その場で被害者ではなく、加害者を慰めるような言動をしたという。被害女性はセクハラ被害に加え、加害者に寄り添うような非常識な対応で、二重にショックを受けたに違いない。
 防衛省の有識者会議が今年8月に再発防止の提言をまとめたが、その中で指摘された組織の悪弊がそのまま表れた不祥事といえる。
 組織を「家族」に例え、ハラスメントに甘い体質に加え、被害を相談したとしても人事上の悪影響を示唆されたり、加害者に情報が漏れたりする。事なかれ主義や隠蔽(いんぺい)体質でハラスメント対策が全く機能しない状況は、女性のいた部隊だけの問題ではなかったろう。
 被害を受けた時期は特別防衛監察のさなかで、当時の防衛相が「ハラスメントを許さない組織」へ号令をかけていた。笛吹けど踊らず、というほかあるまい。
 木原稔防衛相は今回の不祥事を受け「言語道断。法令に基づき厳正に対処する」と厳しい姿勢を示し、ハラスメントへの対応を緊急に点検するよう指示した。しかし、これほど強く染みついた体質を改善するのは容易ではあるまい。
 監察では1325件の報告があり、このうちパワハラが76・7%、セクハラが12・3%を占めた。いかに組織にハラスメントが横行していたかを示していよう。
 被害に遭い、職を失った今回の女性のように、ハラスメントに苦しむ隊員が数多くいることを重く受けとめなければならない。再発防止策を進めることはもちろん、一人一人の被害者に丁寧に向き合う姿勢が重要になってくる。
 自衛隊は統制が求められる組織ではあるが、理不尽さがまかり通れば、「選ばれない職場」になりかねない。ハラスメント対策を重要課題と位置付け、真摯(しんし)に取り組む必要がある。

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