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2023.11.01 08:00

【ウクライナ和平】実現へ機運どう広げるか

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 ロシアによる侵攻から1年8カ月が過ぎ、各国で指摘される「支援疲れ」に加えて、パレスチナ情勢の影響も懸念される。国際社会の関心と支援をどうつなぎとめるか、ウクライナは外交的にも重大な局面を迎えている。
 ウクライナ提唱の和平案「平和の公式」を協議する国際会合が開かれ、首脳級の「世界平和サミット」開催の準備を進める方針などを共同議長声明に盛り込んだ。
 和平案は昨年11月、ウクライナのゼレンスキー大統領が発表。ロシア軍の即時全面撤退や戦争行為の停止、領土の一体性回復など10項目を列挙する。
 ロシア側は「実現不可能だ」として拒否している。戦闘が続く現段階では実現性は高いとはいえないものの、和平への機運を醸成する取り組みは継続することが重要だ。ウクライナは日米欧などに加え、侵攻に対して中立的な立場を取る国が多い、新興・途上国からの支持獲得に力を入れている。
 和平案を巡る3回目のマルタ会合には、66の国や国際機関の高官らが出席したという。6月のデンマーク会合は15カ国、8月のサウジアラビア会合は43カ国の参加だったことを踏まえれば、参加国の増加は一定の成果といえよう。
 一方で、ロシアに影響力を持つ中国は前回会合には出席したものの、今回は欠席。機運に水を差す形となった。
 会合は原子力の安全や、食料とエネルギーの安全保障、捕虜解放などを重点的に協議し、包括的な和平に向けて各国が「幅広い支援を確保するため緊密に協力する」ことで合意。首脳級会合の開催にも道筋を付けた。支援の拡大を働きかけるには絶好の機会となろう。
 ただ、ウクライナの足元は、戦闘の長期化に伴って悪化していると言わざるを得ない。ロシアは一方的に併合を宣言したウクライナ東・南部の4州で、首長や知事を選出するなど実効支配を強めている。
 ウクライナ軍の生命線といえる武器供与に巨費を投じてきた欧米諸国にも、ほころびが見える。先日の欧州連合(EU)首脳会議は幅広い支援の継続で合意したが、一部加盟国は公然と難色を示すなど一枚岩とは言いがたい状況を露呈した。
 パレスチナ自治区ガザ情勢の影響も懸念される。米国のバイデン大統領は演説で、イスラエルとウクライナへの支援を両立する決意を示した。とはいえ、野党共和党との対立や来年の大統領選を控え、これまでと同じ水準で支援を続けられるかには不透明感も漂う。
 国際社会では、民主主義国と専制主義的な国々との分断にパレスチナ情勢が絡んで、対立の構図が一段と複雑さを増した。大国の思惑が交錯する国連の安全保障理事会も機能不全の様相を呈している。
 現状はウクライナに厳しいが、和平の機運を継続・拡大する必要がある。支援を求める説得力、情勢を見極めた外交戦略がより重要となる。

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