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2023.10.31 08:00

小社会 小さな菜園から

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 小さな菜園の営みを始めてから5巡目となる秋を迎えている。ほったらかし農法であるにもかかわらず今年はピーマンとナスがよくなってくれて、3人家族には十分な収穫だった。

 菜園メモを見返せば、5月8日に苗を植えていた。それぞれ二つの苗を買った。その500円ほどの初期投資によって、家庭のピーマンとナスの大半が自給できたことになる。大した世話もしていない。平和で安全な土壌に太陽の光と雨水が降り注ぎ、生を育んでいったのだ。

 収穫したばかりのピーマンとナスをざるに見栄え良く盛って台所に置いた。娘が「つやっつや、やねえ」と言う。それほどスーパーマーケットで買ったものと違わないのかもしれないけれど、その野菜の艶やかさに特別な美しさを感じる。

 大きな戦争が二つも同時に進行している。いったい私たちに何ができるのだろう。この菜園の平穏と断絶した地獄がある。無力感を抱えながらも、私たちには日々の土地の生活があり、そしてこの小さな菜園の営みもある。

 それら収穫も終わりを迎えている。そろそろ抜き取らなければいけない。連作障害とならぬよう、後には何を植えようか。

 冬越しの野菜というものがある。エンドウもそうした野菜の一つである。忍耐強く冬を過ごし、ようやく春に実を付ける。エンドウは春の味がする。厳しい冬の先にある暖かな春の味である。菜園の外に広がる世界も、そうでありたい。

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