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2023.10.30 08:00

【グーグル審査】自由な競争環境が重要だ

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 公正取引委員会が独禁法違反(私的独占、不公正な取引方法)の疑いで米グーグルの審査に乗り出した。スマートフォン端末のメーカーに対し、アプリストアの搭載を認める代わりに、自社の検索サービスを優遇させるなどした疑いがあるという。違反が認定されれば、再発防止を求める排除措置命令などが出される可能性がある。
 インターネット上での基盤を握る巨大IT企業が市場の支配力を不当に維持しようとすれば、競合他社による新たな技術革新が生まれにくくなり、ひいては利用者の不利益となりかねない。健全な市場環境を確保するため、公取委には厳正な審査が求められる。
 公取委によると、グーグルは端末メーカー側にスマホの初期状態でアプリストア「グーグルプレイ」の搭載を許可するにあたり、自社の検索エンジン「グーグルサーチ」など自社アプリを抱き合わせで採用させた上、アイコンを画面上の目立つ位置に配置するよう指定。さらに、競合他社の検索アプリを搭載しないことなどを条件に、収益の一部をメーカー側にも分配する契約を結んだ疑いがある。
 グーグル側は「端末をカスタマイズする(好みに設定し直す)選択肢を提供している」と反論するが、こうした契約が事実なら、メーカーを巻き込んだ不当な囲い込みということになろう。
 自社サービスの継続的な利用環境をつくりだすことで、他社がより便利で安価な検索サービスを提供したとしても、利用者の新たな選択肢になりにくくする。そんな状況が続けば、市場の緊張感は失われ、革新的なサービスが生まれる土壌がなくなってしまう可能性がある。
 グーグルを含め「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業は2000年代から広告や流通などさまざまな市場で支配的地位を占めるようになり、その圧倒的な影響力は国際社会でかねて問題視されてきた。
 欧州連合(EU)は今年5月、巨大IT企業の支配力を制限し、新興企業がネット上で公正に競争できる環境を整備する「デジタル市場法」を施行。自社サービスの優遇などを禁じた。米国の司法省なども独禁法(反トラスト法)違反だとしてグーグルを提訴。グーグルの検索サービスを標準設定にした契約の是非が争点となっている。
 日本でも規制強化の動きがある。政府のデジタル市場競争会議が今年6月、あらかじめ設定されている検索エンジンを利用者が簡単に変更できるよう義務づけるべきだとする報告書をまとめ、法案化が検討されている。
 公取委の審査は、こうした国内外の流れに足並みをそろえた格好だ。グーグルはスマホの基本ソフト(OS)や検索エンジンで高いシェアを誇るが、生成人工知能(AI)の登場で検索サービスの競争も新たな局面を迎えている。転換期にあって、自由な競争環境の重要性は一段と高まっている。

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