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2023.10.29 08:00

【河井事件と検察】供述誘導の徹底検証を

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 河井克行元法相による2019年参院選広島選挙区の買収事件を巡り、検察が不適切な取り調べをしていた可能性を裁判所が認めた。かねて持たれていた疑いが強まった。刑事司法への不信感が増す。事実確認と徹底検証が不可欠だ。
 買収事件で現金を受け取ったとして公選法違反罪に問われた元広島市議への判決で、広島地裁は、東京地検特捜部の検事が、任意の取り調べで元市議の供述を誘導した疑いに言及した。
 河井氏の有罪へ都合の良い供述を元市議から得るために「検察官が不起訴を前提に取り調べたことは否定できない」と指摘。元市議にも「不起訴を期待して検察官の意に沿う供述をした」とし、公選法違反事件には認められていない司法取引の構図を示唆した。ただ、元市議側が違法な起訴だとして求めた公訴棄却は認めず、有罪判決を言い渡した。
 この訴訟を巡っては、渡された現金が買収目的だったと認めさせるかのような検事の取り調べを元市議が録音し、音声データを公表している。買収事件で最終的に34人が起訴された中、元市議以外にも不当な取り調べを訴える被告もいる。
 一方、検察側は調査を進めているとするものの、裏取引は否定する状態が続いていた。判決は、裁判所がその心証に基づき、警告を与えたと受け止めることができる。検察当局は重く受け止める必要がある。
 「筋書きありき」の姿勢で任意性を欠く捜査が行われれば、重大な冤罪(えんざい)を招きかねない。実際、検察は不適切な事例を繰り返してきた。
 10年には、厚生労働省局長だった村木厚子さんが逮捕された事件で大阪地検特捜部で証拠改ざん、隠蔽(いんぺい)があった。その後、検察改革を進めたにもかかわらず、不動産会社「プレサンスコーポレーション」前社長を起訴した19年の業務上横領事件でも、取り調べの威圧的な態度から関係証言の信憑(しんぴょう)性が疑われ、被告が無罪となっている。
 今回の事案を受けて検察が進める内部調査は、関わった検事のみを対象とするだけでは不十分だろう。供述依存体質、独善的で強引な体質が残っていないのか、組織的な問題にまで踏み込まなければならない。
 広島地裁は判決で検察捜査に言及はしたものの、それに対する見解や批判は控えた。録音データが証拠採用されず、法廷で議論されることがなかったためだが、その点は物足りなかったと言わざるを得ない。
 訴訟に際し、捜査手法の違法性を訴えたい元市議側が録音データを証拠提出したところ、検察側は被告の自白調書の証拠請求を見送り、証拠として扱われなかった。検察側は、問題行動に焦点を当てられたくなかったと思われても仕方ない。
 録音データが証拠採用されていれば、捜査の在り方についても精査されたはずだ。それなしでは、有罪判決を受けた被告も納得できまい。同じような訴え、訴訟は続く。裁判所は対応を見直す余地があるのではないか。

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