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2023.10.29 08:00

小社会 地下壕

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 「こちらです。ここから入ります」。山すそに鉄柵で仕切られた入り口。案内役に促され、ヘルメットをかぶる。一度訪ねてみたかったその地下壕(ごう)に10日前入ってきた。

 長野市にある「松代大本営地下壕跡」。帝国ニッポンは戦争末期、大本営や皇居、政府機関などを秘密裏に信州の山あいに移そうとしていた。中枢はここに隠れ、あとは全国民で戦う本土決戦。こんなばかげた計画を当時の指導層は本気で立案した。

 朝鮮人ら1万人を動員しての突貫工事。整然と碁盤目状に掘られた坑道は延長約10キロ(公開されているのはその一部)。薄暗い内部に、ドリルやダイナマイトで粉々になった岩石片がばらばらと残る。

 この地下壕が完成するまで米軍を本土に上陸させず、足止めする役目を負わされたのが沖縄にいた第32軍。もう降伏したい、という訴えは許されず、多くの島民が洞窟などで殺され、集団自決させられた。その第32軍が首里城に残した地下壕を戦争遺跡として保全、公開する計画も近年進んでいる。

 こちらは遺跡ではない。中東のガザ地区に張り巡らされた地下トンネルは全長400キロとも500キロとも。ベトナム、アフガニスタン…。戦力に差のある非対称の戦いのとき、一方は地中に入る。

 血まみれの子ども。泣き叫ぶ市民。イスラエル側の本格侵攻が始まればトンネル内はさらに地獄図になる。停戦はできないのか。ガザのトンネルが「遺跡」となる日を望む。

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