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2023.10.28 08:00

【ガザ情勢】停戦と人質解放へ結束を

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 イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘による死傷者が増大している。パレスチナ自治区ガザへの地上侵攻は被害を拡大させ、新たな紛争を誘発しかねない。停戦と人質解放へ、国際社会の結束した取り組みの重要性が増している。
 ガザでの死者は7千人を超え、イスラエル側を大きく上回る。支援物資の搬入は始まったものの食料や水は行き渡らず、人道危機は深刻だ。燃料の不足は医療機器の稼働にも影響している。
 イスラエルのネタニヤフ首相は国民向け演説で地上侵攻の「準備」に言及した。侵攻への世論の支持は高く、支持率が低迷するネタニヤフ氏は軟化しにくいとの見方がある。
 軍はハマスの戦闘員や爆発物を除去するとして、陸上部隊による限定的な越境作戦を行った。作戦を継続する考えで空爆も強化している。被害のさらなる拡大が危惧される。
 米国の要請を受けて、イスラエルは地上侵攻の延期に同意したとの報道がある。また、人質解放交渉が進展し、多数が解放される可能性があると伝えられた。
 いずれも真相は不明だが、実現へ影響力を行使する必要がある。欧州連合(EU)は戦闘の「一時中断」要請で合意した。人道状況への重大な懸念を表明し、支援物資を搬入する人道回廊の設置を訴える。
 停戦を求める意見は国連総会でも相次ぐ。パレスチナの国連大使は、犠牲者のほとんどは民間人だと強調した。アラブ諸国は、中東の他地域への戦闘波及を強く懸念する。
 イスラエルへの圧力は強まっている。しかし、イスラエルは停戦すればハマスが再び攻撃の準備を進めると受け入れを拒否する。
 国際社会もまた一枚岩ではない。国連安全保障理事会は常任理事国の特権が立ちはだかる。ガザの人道状況を改善するため戦闘の一時停止を要請する決議案などに米国、あるいは中国とロシアが拒否権を行使した。各国は、イスラエルの自衛権に言及していないことや、停戦の文言を含まないことを理由とした。
 大国の思惑が交錯して安保理は機能不全に陥っている。イスラエルを支える米国に対し、中東地域での影響力拡大を狙う中国はパレスチナやアラブ諸国との連携を強める。分断はさらに深まりそうだ。
 グテレス事務総長はハマスの攻撃を「正当化できない」と糾弾する一方、ハマス攻撃の背景にイスラエルの占領政策があると指摘した。イスラエルは反発し、グテレス氏の辞任を要求している。
 問題の根深さを浮き彫りにする気がかりな対立だ。エジプトなどは、安保理は停戦と、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」を実現して中東に平和をもたらす責任があると訴えた。そうした動きを本格化するには多方面の関与が不可欠だ。
 米軍はシリアのイラン関連施設を空爆した。親イラン勢力が駐留米軍への攻撃を急増させていることへの報復としている。混乱を広げないように外交努力が欠かせない。

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