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2023.10.23 08:00

【参院補選】政権に厳しい中間評価

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 事実上の与野党対決となった参院徳島・高知選挙区補欠選挙は、無所属で出馬した元立憲民主党衆院議員の広田一氏が、自民党新人で元高知県議の西内健氏を破った。
 同じ日に開票された衆院長崎4区補選は自民候補が制したが、告示前は劣勢が伝えられていた野党候補が「善戦」と呼べる結果を残した。
 両補選の勝敗には地域独自の事情が絡むものの、岸田文雄首相の政権運営が主要な争点だったことは間違いない。岸田政権に厳しい中間評価が下されたと言える。
 岸田内閣の支持率は低空飛行が続く。東京電力福島第1原発処理水の海洋放出など、世論調査で支持される個別政策もあるが、物価高騰への対応で疑問符を付けられ、財政運営を巡っては「増税派」の印象も持たれている。マイナンバーカードの混乱、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民の関係などでも国民から厳しい目を注がれる。
 支持率低迷の一因に首相の政治姿勢があることも否定できまい。「聞く力」を掲げながら安全保障や原発政策などでは、重要な方針転換を国会で十分な議論もないまま決めた。発信力不足も指摘される。
 広田氏が訴えの軸とした「自民1強の緩み、おごり」を有権者も少なからず感じていたとみてよい。首相や政権・与党幹部は、選挙結果を謙虚に受け止める必要がある。
 選挙区の戦いを振り返れば、自民前職の秘書暴行問題に起因して補選になった経緯や内閣支持率の低迷などから、西内氏に逆風だったのは確かだろう。その中で、衆参計3回の当選歴があり、「県内野党最強の人材」とも称された広田氏が、実質的な野党共闘態勢の下、スムーズに政権批判票を取り込んだ。
 ただ、無所属での出馬は、幅広い支持の獲得など選挙戦術としては一定機能したが、看板を隠した方が票に結びつくという野党勢の厳しい状況もさらした。広田氏も今後、政党政治である国政でどう立ち回っていくか難しさを残しており、対応が注目される。
 西内氏の票の伸び悩みは、不祥事を起こした前職を公認してきた党の組織的責任を、有権者が納得する形で総括できていなかったことも影響したのではないか。逆風が弱いとみられた徳島での劣勢も誤算だった。
 深刻なのは投票率だ。高知は前回を6・61ポイント下回る40・75%、地元出身候補のいなかった徳島は前回より21・80ポイントも低い23・92%で、全体では14・37ポイント低い32・16%だった。有権者の3分の2以上が棄権した。危機的な水準だと言える。
 突発の選挙であり、それに至った経緯にも有権者がしらける要素があったのは確かだ。しかし、政権運営に影響を与える重要な選挙だった。「地元代表を選べない」などとして低投票率傾向が顕著な合区選挙の弊害が、より鮮明に出た。
 皮肉にも今回の補選が、合区の実情や有権者の不満を全国に発信できた側面はあるだろう。解消への動きを加速させる必要がある。

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