2023.10.23 08:00
小社会 謝罪の要諦
余計な一言というのもある。20年余り前、集団食中毒事件を起こした雪印乳業。謝罪文を読み、会見を一方的に打ち切った社長は、追ってきた記者に「私だって寝てないんだ」。
著書に「その対応では会社が傾く」がある危機管理コンサルタント、田中優介さんは「不祥事を起こした側がメディアにキレるのはタブー」と指摘する。「食中毒そのものよりも、雪印乳業のイメージを悪化させてしまった」
参院徳島・高知区の補欠選挙が終わった。暴力問題による自民党前職の辞職に伴う選挙。自民の西内健さんは、謝罪から始めざるを得ない戦いになった。県連幹部として、それも覚悟の出馬だったと推察する。とはいえ、首をかしげる余計な一言もあった。
告示後、横顔を紹介した本紙記事。不祥事を高知新聞が書き続けるのは理解できるとしつつ「いつまで引っ張るのか」。いやいや、前職がまともに説明しないからいつまでも書かれる。世論の解毒には無用の一言だったかもしれない。
政権への不満、不祥事。お灸(きゅう)をすえる民主主義が機能した選挙には映った。ただ、合区選挙のいびつさも手伝ったであろう低投票率には危機感も募る。