2023.10.19 08:00
【ガザ人道危機】犠牲の拡大回避に努めよ
ハマスの奇襲に対し、イスラエル軍はハマスが実効支配するガザへ砲撃を行っている。これまでに死者は双方で計4100人を超えた。
イスラエルは戦時内閣を樹立した。軍はハマス掃討へ過去最多の予備役36万人を招集して部隊の増強を図っている。ガザへの地上侵攻が想定され、緊張が高まる。
ガザ北部住民は南部へ避難するようにイスラエルは求めた。対象は110万人規模になる。既に60万人が移動し、ガザの人口の約半数の100万人以上が自宅から避難したとされる。
イスラエルはガザの電気や食料、燃料を遮断する「完全封鎖」を図る。支援物資搬入のため、ガザ南部のエジプト境界にあるラファ検問所が再開する見通しだが実現せず、物資不足は深刻化している。
過去の戦闘では人道回廊が設置され支援物資が搬入されたが、今回は停戦へ向けた動きが鈍い。さらに時間がかかるとみられる。
住民の移動にしても、交戦地帯を通じて南部へ向かうのは危険が伴う。避難先でも安全な滞在場所がなく、食料や水が満足に行き渡らない厳しい状況に置かれている。
こうした状況下、ガザ北部の病院で爆発が起き、数百人が死亡したと伝えられた。病院から避難しようにも患者の容態や医療従事者の不足でできない事例があり、被災が危惧されていた。
イスラエルは空爆を否定し、ハマスとは別の過激派による誤射と主張している。ハマスはイスラエルによる虐殺と批判した。情報は交錯しているが、最悪の事態となりアラブ諸国に強い衝撃を与えている。
大規模攻撃を先に仕掛けたハマスが非難されるのは当然だ。攻撃停止と人質の早期解放が求められる。一方でイスラエルの報復攻撃はガザ市民に多大な犠牲を強いている。死者数は既に2014年の地上侵攻時を上回った。犠牲が新たな憎しみを生み、解決をさらに遠ざける。
反イスラエル感情の高まりで中東和平は混迷度合いを深めている。レバノンの民兵組織ヒズボラとの軍事衝突拡大も懸念される。冷静さを欠けば紛争は域外に大きく広がる。
バイデン米大統領はイスラエルを訪問した。連帯の表明とともに、自制的な姿勢を期待する。ガザでの民間人犠牲を食い止め、紛争の拡大防止につなげていく。ただ、パレスチナ自治政府のアッバス議長には会談を拒否された。合意形成の困難さを物語るが、強い危機意識を成果につなげることが重要だ。
国連安全保障理事会は、ハマスの攻撃を非難せず当事者に「停戦」を要請するロシア提出の決議案を否決するなど分断が鮮明になっている。思惑が絡み合い一致した意見は簡単には見いだせないとはいえ、大惨事は止めなければならない。