2023.10.15 08:00
小社会 金魚の絵
「コンピューターが当分できそうにないのはおしゃべりだろう」。AIが人を凌駕(りょうが)するとされる「2045年問題」に触れ、外山さんは確かにある本に書いていた。
おしゃべりがいかに脳を刺激し、人を豊かにするか。取材先やご近所さんとの会話を思い、そうですねえ、と相づちを打ちつつ、内心、少しもやもやと…。
先日、IT界をいく孫正義さんの講演動画が配信された。いわく、あと20年でAIの能力は人類の英知の1万倍になる。AIから見ると、その時の人間はabcが分からない「金魚」みたいな存在。金魚の脳の神経細胞の数は人間の1万分の1なんです―と金魚の絵を示す。
AIと毎日対話してきた孫さんはそれに飽き足らず、最近は複数のAIのキャラクターをつくり、AI同士に話をさせているという。業界の先導者はもう従来の対話からは距離を置き始めている。
対話することなく、血が流れる世界。AIは人の対話能力を高めてくれるだろうか。講演動画を見た翌日、数奇なことに県展会場で2枚の金魚の絵を見た。分かるような分からないような不思議な図。何ですか、これは? 金魚の前でもやもやとした思考の整理を試みる。どこかから楽しげな人の語らいが聞こえる。