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2023.10.14 08:00

【札幌五輪断念】「東京」の事件足かせに

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 札幌市と日本オリンピック委員会(JOC)が2030年冬季五輪・パラリンピックの招致を断念すると表明した。肝心の住民支持が広がらなかった。
 無理もない。誘致は21年に開催された東京大会を巡る汚職・談合事件などでイメージが悪化した。経費の大幅増も問題となった。
 政府や東京都、組織委員会はそれらを十分検証したとは言い難く、受託収賄罪で起訴された被告が所属していた組織委に至っては、既に解散し、清算法人となっている。
 これでは大会の招致・運営に不信や疑問が募るばかりで、支持は広がらないだろう。強引に大会開催に突き進めば、五輪やスポーツの未来に禍根を残す恐れもある。招致中止の判断は当然である。
 1972年に冬季五輪を開催した札幌市は2014年、2度目の札幌大会の26年招致を表明。その後、目標を30年に切り替えて活動に取り組んできた。
 しかし、東京大会の事件を受け、機運醸成活動を一時休止。本社加盟の日本世論調査会が昨年11~12月に実施した調査では、30年大会招致に賛成する人は全国で57%と過半数を占めたものの、北海道の住民に限っては反対が56%に上った。
 市などはその後も状況は改善されていないと判断したようだ。地元の経済界に34年開催を望む声が強まっている影響もあっただろう。
 国際オリンピック委員会(IOC)は当初、運営面が高く評価できる札幌を最有力候補に位置付けていた。昨年予定していた30年の開催地決定を24年に延期したのも、札幌のために東京大会の事件のほとぼりが冷める時間をつくった、といわれている。そのIOCも最近は札幌に見切りをつけていた。
 市は34年大会以降に切り替えて招致活動を継続する。ただ、それも現状では慎重に検討する必要があるのではないか。
 東京大会を巡る事件は日本での五輪開催の大きな汚点となった。スポーツ庁やJOCなどは今春、スポーツ汚職防止のため、大規模スポーツ大会の運営指針をまとめたが、負のイメージを払拭することは簡単ではない。
 経費の問題もある。東京大会の経費は最終的に、13年の招致段階の試算より2倍近く膨らんだ。資材や人件費の高騰が続いているのを踏まえれば、将来の大会開催も相当な公費投入を覚悟しなければならない。
 関係機関はいったん立ち止まり、招致や大会の方向性をしっかり再論議する必要があろう。IOCも商業色が強まっている五輪の在り方を見直すべきである。
 東京大会を巡る事件の影響の大きさが今回改めて浮き彫りになった。組織委は解散前の報告書で大会を自画自賛したが、きっちりとした総括もなく無責任と言わざるを得ない。
 札幌開催を待ち望んでいた人や選手にも失望を与える結果となった。将来にわたって五輪や国際大会の誘致の足かせにならないか心配だ。

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