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2023.10.09 05:00

【解散命令請求へ】厳格に手続きを進めよ

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 政府は宗教法人法に基づき、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を近く請求する方針を固めた。文化庁が12日にも宗教法人審議会を開いて意見を聞き、速やかに東京地裁へ申し立てるという。
 教団を巡る問題では、長年にわたって霊感商法や高額献金の被害報告が相次いだ一方、憲法が保障する「信教の自由」との絡みもテーマになってきた。政府は禍根を残さないよう透明性を確保した上で、厳格に手続きを進める必要がある。
 宗教法人法は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」があった場合、所轄庁などの請求で裁判所が解散を命じることができると規定。命令が出ると宗教法人格を失い、税制上の優遇が受けられなくなる。
 岸田文雄首相が調査を指示し、文化庁は解散命令につながる法令違反などが疑われるとして昨年11月以降、質問権を計7回行使。旧統一教会の法的責任を認めた民事判決や教団本部がある韓国への送金などについて資料の提出を受けた。
 請求に向けた最大のハードルは、不法行為の「組織性、悪質性、継続性」をどう立証するかだろう。過去2件の解散命令は地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教と霊視商法詐欺事件の明覚寺(和歌山県)で、いずれも刑事責任を問われたケースだった。教団側は民法の不法行為は解散命令事由の法令違反には当たらないと反発しているだけに、慎重な対応が求められる。
 政府が解散命令の請求方針を固めたのは、厳しい要件を満たせるだけの根拠を得たからだろう。500項目以上の質問に対して、教団側は信教の自由などを理由に100項目以上に回答しなかったが、文化庁は提出された資料に加え、高額献金の被害者らの証言を積み重ねて調査を補強したという。
 裁判所の審理は長期化も予想されるが、被害状況を含めて、不透明な教団の運営実態をしっかりと解明することが期待される。
 教団への追及姿勢を強める政府・与党だが、自らも教団と政治の関わりを明らかにする責任がある。
 自民党は昨年9月、所属国会議員の計180人に接点があったとする調査結果を公表した。だが、岸田政権は追加調査に慎重で、安倍晋三元首相との関係や教団の影響、地方議員との関わりといった実態は明らかになっていない。
 特に、教団との接点が多かった清和政策研究会(現安倍派)の会長も務めた細田博之衆院議長だ。関わりを認めつつも、公開の場での説明を拒んできた。「体調に自信がない」として議長を辞任する意向が伝えられたが、このまま説明責任から逃げ続けるつもりなのか。
 第2次岸田再改造内閣でも4人の新閣僚、副大臣と政務官の半数近くに教団側との接点が指摘された。まるで過去の問題と言わんばかりの姿勢である。有権者の疑念をなおざりにしては、いつまでたっても政治不信を解消できまい。

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