2023.09.30 09:19
「入浴着」理解広がって 銭湯など「着用OK」徐々に 乳がん手術経験者ら愛用【なるほど!こうち取材班 パートナー紙とともに】
乳がん手術経験者が公衆浴場などを利用する際、手術跡を覆うように着る「入浴着」
笠原優子さん(47)は昨年1月に乳がんが見つかり、左胸を全摘出。胸の再建はしなかった。抗がん剤治療を終え、「自分へのご褒美に」と県外を旅し、楽しみにしていた温泉を訪れた。手術跡を見られないようにと初めて入浴着を準備。施設スタッフに使用の可否を尋ねたところ、「前例がないから」と断られた。同じ地域の別の温泉施設でも断られ、結局、シャワールームで汗を流した。
厚生労働省は都道府県などへの通知で、事業者に入浴着着用への理解を求めている。同省ホームページでは「公衆浴場、旅館・ホテルの浴場、サウナなどでは入浴着を着用したまま入浴できる」「浴槽に入る前に付着したせっけん成分をよく洗い流すなど、清潔な状態で使う場合は、衛生管理上の問題はない」などと周知している。
県内外でスーパー銭湯「越のゆ」などの温浴施設を運営する「越のゆグループ」(本部福井市)は、昨年6月から全10施設で入浴着OKと周知。女湯の脱衣場にポスターを掲示し、受付で入浴着を販売している。
ただし、施設によって温度差はあるようだ。福井市内のある銭湯店主は「他の利用者が気にしなければ自由に使ってもらえばいい」と話す一方、別の店主は入浴着への理解を示した上で「不衛生に感じて嫌がる人もいると思う」と打ち明け、利用者に配慮して着用を断っているという。
笠原さんは「入浴着を着用しても人目を避けて入浴したり、公衆浴場での入浴を諦めたりしている人は多いのではないか」と推測しつつ、「手術跡を隠すことなく、誰もが大きなお風呂でリラックスできるようになるのが理想です」。第一歩として入浴着スタイルが浸透することを願っている。(福井新聞)
県民・読者とつくる調査報道企画、高知新聞「なるほど!こうち取材班」(なるこ取材班)。連携する全国のパートナー紙の記事や県内の状況を随時掲載で紹介します。
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