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2023.09.26 08:00

小社会 いわし雲

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 人間探求派と呼ばれた俳人、加藤楸邨(しゅうそん)の句に〈鰯(いわし)雲人に告ぐべきことならず〉がある。難解。いわし雲はどこか寂しく、自分は言いたいことも口に出せない。戦前、教師だった楸邨が生徒を次々に戦場に送り出したことを悔いたとの解釈もある。

 お彼岸の墓参の帰り、高い秋空にいわし雲を見た。高度5千メートル以上にかかる「巻積雲」の一種。白く小さな雲が、イワシの群れのように並ぶ。この雲が出ると大漁の兆し、またはしけの前兆といわれるそうだ。

 雲の形で呼び方が違うのか。うろこ雲、サバの背の模様に似ていることから、さば雲とも。水産庁の交流サイトには「秋空には魚がいっぱい」。雲の命名一つをとっても、つくづく海や魚が身近な国だと思う。

 福島第1原発で処理水の海洋放出が始まって1カ月が過ぎた。国内の消費者は冷静に見える。海の幸を返礼品とするふるさと納税への寄付が増え、漁業者を応援する動きも伝わる。ともかく、政府にはモニタリングを徹底し、正確な情報を全て隠すことなく開示する責任があろう。

 一方、ホタテの在庫が山積みになった映像も流れてくる。中国が日本の水産物の全面禁輸を解く気配はない。対日圧力のカードとされる中国の強硬姿勢を、当初の閣僚は「想定外」と述べた。

 放出方針を決めて2年余り。相手に理屈を伝え、出方を探る対話はどうしていたのだろう。国の外交が言うべきことも言わないのでは困る。

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