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2023.09.22 08:00

小社会 見返り

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 一昨日の本紙に棚田を赤く彩るヒガンバナの写真が載っていた。小欄の通勤路でも、ちょうどいまが見頃。秋の風情を感じさせてくれている。

 ヒガンバナは里で身近な存在ながら、どこか敬遠されてきた植物でもある。花の色形が独特なゆえか、球根に毒が含まれるせいか。はたまた、お墓の周りにもよく咲くためか。地域によっては「シビトバナ」「ソウシキバナ」などと縁起の悪い別名がある。

 ところが、適切に毒を抜けば球根からは良質のでんぷんが取れる。「飢饉(ききん)の際の飢えを救ってきた歴史がある」(田中修著「雑草のはなし」)という。一説には仏教とともに中国から伝来。人為的に植えられ、各地に広まった可能性があるようだ。

 興味深い生態には、群生して鮮やかな花を咲かせるものの種は一切できず、球根のみで増える点がある。ユリも球根の植物として知られるが、多くは花の後に種ができる。その点でヒガンバナの花は「ただ無駄に咲いているにすぎない」と牧野富太郎博士も著書「植物知識」で指摘している。

 しかも花は飛んできたチョウに蜜まで提供する。何の見返りも求めずに施しているのなら、それこそ仏教のお布施の精神にも通じる生態。人が敬遠するなど失礼な話かもしれない。

 さて、人間社会はこの秋も黒い見返りを巡る事件で持ちきりだ。風力発電事業に絡む「政治とカネ」の問題もそう。見返りなしの政治はできないのだろうか。

高知のニュース 小社会

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