2023.09.21 08:00
小社会 国体の種、五輪の花
その栄勝さんは青森県出身。三重への就職は1975年三重国体に地元選手として出るためだった。そこでテニス選手だった妻幸代さんと出会う。幸代さんは著書で、「2人の人生が交差」し「人生を決定づけた」のが国体だと振り返る。
パリ五輪出場を決めた桜井つぐみさんの父・優史さんも、国体が転機になった。2002年高知国体を見据え、県外選手だった優史さんは県内教員になり、そして指導者に。指導者含みで来た以上「高知のレスリングが駄目と言われるのが嫌だった」と情熱を燃やした。
国体を縁に地域に練習環境を整え、親子鷹で名選手を育てた指導者2人。その姿を重ねてみる。
あらためて思いが巡るのは、国体の意義か。開催地の勝利至上主義や受け入れ側の負担など、問題は多い。お金も人も乏しい高知県の単独開催は無謀と言われた。それでも県民挙げて乗り切ろうとしたのは、功罪の「功」も信じたからではないか。その一つが未来の地元オリンピアンだ。
高知国体でまいた種が20年余りを経て「五輪の花」を咲かせたのは、感慨深いものがある。いい色の花を、とは気の早い話。