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2023.09.19 08:00

小社会 張りぼて

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 「はりぼての野田城」という民話が大阪にある。700年近く前。楠木正成の家来、野田四郎正氏が足利尊氏の大軍に迫られて「いちかばちか」と一計を案じる。

 村じゅうから紙や絵の具を集め、木組みをつくり、絵を描いた。屋敷に毛が生えた程度の野田城は、一夜のうちに大きな城に。朝日を浴びてそそり立つ天守閣が見かけ倒しと見抜けなかった足利軍は、驚いて退却した(偕成社「大阪府の民話」)。

 張りぼてとは、張り子づくりの芝居の小道具などを言う。比喩として、見かけは立派だが実質の伴わないもの。辞書の「大辞泉」デジタル版に、こんな例文があった。「二世議員ばかりで実務経験のない張りぼて内閣」

 岸田首相が内閣改造で、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を起用した。政権が掲げる女性活躍を国民にアピールしたかったに違いない。ただ、その2日後の報道にも少々驚いた。「副大臣・政務官54人 女性ゼロ」

 識者は言う。「政治のジェンダー格差を本気で是正する意思は感じられない」。各派閥に気を使った内向き人事も要因だが、そもそも自民党の国会議員のうち女性は12%未満。政党が人材の育成機能ならば、取り組みの遅れもあるのだろう。女性閣僚数で見かけはよくしても、実質は伴っていないということか。

 思えば、異次元の少子化対策も財源論が先送りされている。政治のアピールに張りぼてがあれば、目を凝らしたいものだ。

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