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2023.09.14 08:00

【内閣改造】内向きの論理が目立つ

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 岸田文雄首相(自民党総裁)が内閣改造と党役員人事を行った。
 党内第2派閥の領袖(りょうしゅう)、麻生太郎副総裁と第3派閥を率いる茂木敏充幹事長は留任させた。「三頭政治」と呼ばれる体制を継続するとともに、最大派閥の安倍派では松野博一官房長官ら有力者を続投させ、政権の骨格を維持した。
 2人だった女性閣僚は過去最多に並ぶ5人を起用した。閣僚や議員の女性割合の低さが国内外の批判を浴びる中で、女性活躍推進への積極的な姿勢と刷新感をアピールする狙いがあるのだろう。
 一方で、来年9月の党総裁選に向け、自らが率いる岸田派が党内第4派閥に過ぎない首相は、各派閥のバランスに配慮。自らの権力維持とライバルの封じ込めを図った「内向きの論理」が目立つ。
 首相は、「ポスト岸田」を狙う茂木氏の幹事長続投について熟考したようだ。結局、「三頭政治」の安定を優先させる一方で、小渕優子党組織運動本部長を党四役の選対委員長に登用した。
 茂木派内で「次世代の首相候補」との期待がある小渕氏の起用は、茂木氏へのけん制と目される。ただ、小渕氏は2014年に政治資金問題で経済産業相を辞任。いまだに説明責任を果たしていないという指摘は絶えない。
 21年の岸田政権発足当初には、金銭授受問題を抱えた甘利明幹事長が批判を浴び、早々に辞任した例がある。首相は今回も「政治とカネ」に対する国民の厳しい視線よりも、自らの総裁再選戦略を優先させたのではないかという印象すら拭えない。
 所属議員100人を抱える安倍派は、ほぼ「満額回答」とされる。総裁再選を考えれば敵に回すことができない首相は、有力者の萩生田光一政調会長らを留任させた。
 しかし、萩生田氏は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題では、関連団体との接点で批判を浴びてきた。政府は解散命令請求に向けた検討を進めている。今後、再び国民の関心は高まるだろう。この問題に対する岸田政権の真剣度があらためて問われるのではないか。
 このほか、河野太郎デジタル相ら「ポスト岸田」候補の取り込みや、非主流派の党四役での処遇などにも腐心したようだ。総裁再選に向け、政権と距離を置く動きを抑え込みたい意図の表れといえる。
 共同通信による8月の世論調査で岸田内閣の支持率は33%台と最低水準にとどまった。直近の理由は、マイナンバーカードを巡るトラブルや物価高、自民党議員による不祥事の「三重苦」とされる。
 これに加えて、物価高に苦しむ中で、大幅な予算増額を見込む少子化対策や防衛力強化の財源を曖昧にしている不誠実さもありはしないか。負担増を警戒する国民の将来不安は膨らんでいる。
 内向きの論理が目立つ人事は適材適所になっているのか。国民に顔を向けた政策を立案、実行できるかで試されよう。

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