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高知新聞PLUSの活用法

2023.09.13 08:00

小社会 コピー文庫と紙の心

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 20ページほどの紙をホチキスで閉じただけ。装丁は軽くてカラフル。堀内恭さんと妻の和代さんのつくる「入谷(いりや)コピー文庫」は一回手にしたら捨てられない。

 発刊部数は毎回15部。毎度テーマを変え、通巻235号に及ぶ。知人や面白がってくれそうな人に短い手紙を添え、無料配布している。

 18年前に始まる1冊目は映画「男はつらいよ」に全作ワンシーンのみ出演した脇役女優を取材した「谷よしの映画人生」。ほかにも町工場、B級映画、人生語録、酒場…など、どっこい生きている人や文化の記録を多彩な書き手で刻んできた。

 堀内さんは高知出身のプロ編集者で、コピー文庫に書くあとがきも味わい深い。ラスト1行は歌の題名を必ず引き、「ジョン・レノン『マザー』を聴きながら…」といったフレーズで締める。これが何だか心に沈んできて染みる。

 ある回のテーマは「新聞」。堀内さんはあとがきで、高知の電車で見た、今どき珍しい〈新聞をむさぼり読む男性〉の姿を記し、新聞への励ましと、温情あふれる言葉をつづる。文を締める一曲が、また懐かしく渋いチョイスだ。〈さだまさし『朝刊』を聴きながら…。〉

 本紙は元の敷地を離れ、新社屋へと移ってきた。小欄も引っ越しで大量の文書を処分したが、これまでに何冊かもらったコピー文庫は手放せなかった。一人一人に手渡す紙の文字の神髄が、ここにある。人の心に沈殿する、紙の文化よいつまでも。

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