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2023.09.09 08:00

【ジャニーズ会見】新体制に懸念は残る

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 ジャニーズ事務所創業者のジャニー喜多川氏による未成年男性タレントへの性加害について、事務所が事実を認め、謝罪した。新体制も発表し被害者救済と補償を約束した。
 だが、藤島ジュリー景子社長の後任に所属タレントである東山紀之氏が就いた新体制は、実質的に身内でのトップ交代劇と言える。外部専門家の再発防止特別チームが求めていた「解体的出直し」には程遠く、体質刷新に疑問は残る。信頼の回復には、被害者救済と組織改革を着実に進めていくほかない。
 性加害の事実認定と謝罪、救済の姿勢に対し、被害者らは一定の評価をした。ただ、一連の対応は遅きに失したと言わざるを得ず、全面的に信用できるような現状ではない。
 今回の問題は、タレントの生殺与奪権を持っていた喜多川氏が、弱い立場の少年に迫った性嗜好(しこう)異常が招いた。その重大な性加害が事務所内では放置、隠蔽(いんぺい)され続け、今年になって改めて注目されるようになっても、特別チームが認定するまで事実を認めなかった。
 身内への甘さ、世間の価値観とのずれ、法令順守意識の欠如を指摘されてもやむを得ず、再発防止チームが挙げた「同族経営の弊害」だとも言える。
 新体制でその弊害が解消されたとは言えない。東山氏は最年長の所属タレントであり、前社長も100%株式を持ったまま代表取締役で残る。前社長は被害者救済に専念すると説明するが、そのような体制で旧弊と決別できるのだろうか。
 事務所名を当面維持するとした判断も、「解体的出直し」の趣旨に沿わず、身内への甘さと言われても仕方あるまい。「タレントのプライド」などを理由に挙げたが、今回の不祥事で創業者の名前に嫌悪感を覚える人も少なくないだろう。
 東山氏は、喜多川氏の行為を「鬼畜の所業」「人類史上最も愚かな事件」と表現した。同族経営の弊害と周囲の批判を意識したからこそ、大仰な表現で酷評したのではないか。新ポストに「人生を懸けて取り組む」と述べた覚悟が問われる。
 事務所は、被害者の救済へ法を超えた対応、時間を区切らない対応を示した。具体案は示しておらず、救済はスタートラインに立ったに過ぎない。会見で示した真摯(しんし)な姿勢を実践していかなければならない。
 今回の問題は、これまで直視されにくかった男児に対する性加害の存在を浮き彫りにした。特別チームの被害者へのヒアリングでも、心の傷の深さが明らかになった。社会全体で男児の性被害の対策強化につなげていくべきだ。
 また、芸能界では職務上の優越関係を悪用した性的ハラスメントが起こりやすいとされる。業界の悪弊にメスを入れるきっかけにする必要もある。
 喜多川氏の性加害報道に消極的だったメディアの姿勢も問題になった。それぞれのメディアが芸能界との向き合い方を検証し、再考することが求められる。

高知のニュース 社説

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