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2023.09.06 05:00

【予算概算要求 】平時に戻さないのか

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 政府の予算の膨張傾向に歯止めがかからない。各省庁からの2024年度予算の概算要求が締め切られ、一般会計の要求総額は過去最大の114兆3852億円となった。
 金額を示さない「事項要求」も多用されており、本来なら要求を絞り込んで年末に決まる当初予算額は、要求総額を上回る可能性が高い。税収で足りない財源を大量の国債で穴埋めする収支構造が続き、財政状況は一段と悪化しそうだ。
 岸田文雄首相は、6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」で、大規模な財政出動を余儀なくされた新型コロナウイルス禍の局面から転換し、歳出構造を平時に戻していく方針を示していた。それと逆行するような流れである。
 国債の大量発行に頼るいびつな財政が続けば、将来世代に重いつけを回すことになるのは言うまでもない。政策の硬直化、国債や通貨の信用度低下などの弊害も招きかねない。財政運営の比重を、規律重視に寄せるべきではないか。
 予算膨張の主な要因のうち、社会保障費は少子高齢化が進む中でやむを得ない面があろう。だが、23年度当初予算より1割以上多い7兆7385億円を計上した防衛省の要求額はどうか。事項要求もあり、実際はさらに上積みされる可能性が高い。
 5年間で約43兆円を投じるとする防衛力整備計画の2年目に当たり、それに沿ったのだろう。ただ、そもそもが「額ありき」とされる計画であり、装備の必要性に疑問が呈されている。財源もあいまいなままだ。要求内容が精度を欠いていれば厳しい目で見られるのは当然だ。
 国債の利払いや返済に充てる国債費の伸びも要求総額を押し上げた。日銀の大規模金融緩和策の修正などで国債の想定金利を引き上げ、前年度より3兆円近く多い28兆円余りを見積もった。
 金利の上昇はかねて警戒されており、抱えていた問題のつけが現れ始めた格好だ。金利上昇が続けばさらに厳しい財政運営を迫られるのは必至で、その点からもいびつな収支構造の見直しが必要になる。
 全体を通じて見過ごせないのは、事項要求が多用されたことだ。
 事項要求は、8月段階で見通しが立てづらく金額を示せない事業について項目のみ示し、その後に認められれば事業費を上乗せする。新型コロナ下で例外的に行われた措置だが、常態化しつつあり、23年度予算額は概算要求総額を約4兆3千億円上回った。今回も少子化対策や物価高対策などで目立っている。
 しかし、予算編成のプロセスや事業費の根拠などは不透明感を増し、施策の検討が不十分なまま予算化される懸念もある。その特性を踏まえ、各省庁が国民的な議論を経ずに事業を進めたい時に意図的に事項要求しているとの見方すらある。
 言うまでもなく、収入に応じた歳出規模であることが持続可能な財政の基本だ。予算膨張に慣れたコロナ禍の局面は過ぎた。厳格な査定と予算編成の透明化が求められる。

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