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2023.08.30 08:00

【2学期スタート】子どもの心に寄り添おう

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 8月も終わりが近づき、間もなく2学期が始まる。県内の一部の学校では既に授業が始まった。
 この夏休みは、新型コロナウイルス禍による行動制限がなかった。旅行やレジャー、部活動などに充実した時間を過ごし、思いを新たにして新学期に臨もうとする児童生徒も少なくないことだろう。
 だが、悩みを抱えていたり、学校生活にしんどさを感じていたりする子どもたちにとって、休み明けは精神的に不安定になりやすく、自殺や不登校が増える傾向にある。
 この時期、大人たちはいつも以上に子どもの心に寄り添い、異変のサインを見逃さないよう心がけたい。
 全国の小中高生の自殺は、新型コロナの国内流行が始まった2020年に、前年から100人増の499人に急増。21年は473人、22年は過去最多の514人に上った。今年1~7月は暫定で200人を超え、高止まりしている。
 コロナ下ではさまざまな行動制限が子どものストレスになり、発散の場も限られた。家庭の経済的不安に直面した例もあった。自殺の増加を招いたことは否定できまい。
 コロナ感染症が5類に移行しても楽観は禁物だ。子どもたちは対人関係で葛藤や試行錯誤を経験し、ストレスの対処法も学ぶ。しかしコロナ下の3年は人付き合いが制約された。その影響で、これから問題が顕在化すると指摘する専門家もいる。
 コロナ下でなくても、いじめや貧困、虐待、スマートフォン依存など子どもを取り巻く状況は複雑化している。子どもたちと向き合う目を緩めるべきではない。
 子どもの不安のサインには、体調不良や宿題が手に付かないこと、ゲームに現実逃避して夜更かしすることなどが挙げられる。
 こうした子どもに対しては、頭ごなしに押さえつけないことが基本となる。大人が心配していることを伝え、話を聞くことが第一だ。
 その上で、学校以外にも安心できる居場所があることを伝えることが重要になる。学校復帰だけを目的としない不登校対策についても理解が進み、社会的な認知度が高まってきている。フリースクールなどの選択肢を示せるようにしたい。
 組織的な対応では、子どもの自殺が昨年最多だったことを受け、国は6月に「こども自殺対策緊急強化プラン」を決定した。
 プランは、子どもへの「SOSの出し方」の周知徹底、適切に対応するゲートキーパーの養成、交流サイト(SNS)を活用した相談体制の拡充などを掲げる。また、全児童生徒に配っているタブレット端末を使ったリスク把握事業に着手。都道府県ごとに対応チームを設け、対処が難しい事例に多職種の専門家で連携して応じるなどとしている。
 この夏までにできたことは限られたかもしれないが、抜かりなく速やかに実践することだ。自殺対策の現場は、地域の意欲やその場の人材の有無によって濃淡があるのが実情だろう。ノウハウを積み上げ、各地に広げていくことが求められる。

高知のニュース 社説

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