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高知新聞PLUSの活用法

2023.08.25 08:00

【ひきこもり支援】対応をよりきめ細かく

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 ひきこもりは外側から見えにくいこともあって実態把握が難しく、支援策やその有効性などもまだ手探りの面があるのが実情ではないか。要因や状況も一様でない。効果的な支援の在り方を、速やかに確立していきたい。
 厚生労働省が、ひきこもりの人や家族の支援強化に乗り出す。本年度中に全自治体を対象に初の実態調査を実施。各地の相談事例や課題に基づいて、2024年度に支援マニュアルを策定し、各自治体の相談窓口などで活用してもらう。
 支援強化の背景には事態が深刻化していることがある。ひきこもり状態の人は増加傾向にあり、昨年の調査では推計で全国146万人に上る。長期化し、高齢の親(80代)と子ども(50代)が生活に困窮する「8050問題」も社会問題化している。
 これまでの国の支援が実態に合っていない、との指摘もあった。
 10年に同省研究班が策定したガイドラインは、ひきこもりを「他人と交わらず、家庭に6カ月以上とどまり続けている状態」と定義。精神疾患の有無の判断や早期受診など医学的な視点と対処を重視した。
 ただ実際は、疾患がなかったり、時々は自分で外出したりするようなケースなどもあり、6カ月という期間や受診がハードルになって、医療以外の行政支援とつながらない事例があった。
 こうした状況を受け、厚労省はこれまでの「治療」中心の支援から、多様な悩みに寄り添う「伴走型」への転換を掲げる。ひきこもりの定義自体も見直す方針という。幅広い支援メニューときめ細かい対応によって、ひきこもりが解消される事例が増えることを期待したい。
 本年度行う実態調査では都道府県や支援団体などが受け付けた相談事例を聞き取り、課題を抽出。新たに作るマニュアルで事例を類型化し、類型ごとに、就労機会や安心できる居場所の紹介、社会活動への参加など多様な支援の在り方を示す。
 国の方針に基づき、都道府県と政令市などには専用窓口「ひきこもり地域支援センター」が設けられており、マニュアルは各センターを軸に現場で活用する。
 ただ、対応する現場職員の知識不足を課題に挙げる専門家もいる。ひきこもり支援は、心の繊細な部分に踏み込み、かつ長期にわたることが多い。親や当事者との信頼関係なしには成果は出づらい。現場の人材育成が重要になる。
 当事者らの受け皿になる、就労の場や安心できる居場所の拡充も併せて進めていく必要がある。
 外部に知られたくないと考える当事者や家族も少なくないだろう。だからといってそのままでは問題は解決しない。必要な家庭に支援策が届く工夫も検討していくべきだ。
 高知県では、3年前の初めての実態調査で692人が報告された。民生委員のアンケートに基づく数字で、潜在的にはさらにいると予想される。政府の支援強化に合わせ、きめ細かい対応を探っていきたい。

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