2023.08.25 07:46
「ノジギク」に心動かされた弥之助 寿恵子熱弁「日本古来の菊」【連載記事復刻】兵庫県花「ノジギク」
©️NHK
朝ドラ「らんまん」第21週の週タイトルは「ノジギク」です。ノジギクは牧野富太郎博士が22歳の時に高知県吾川村の山中で見つけて命名した植物です。博士の美しい植物図が日本植物志図篇にも掲載されて広く知られることになりました。兵庫県に群生地もあり、同県の「県花」にもなっています。
牧野が命名して兵庫県の県花ともなった「ノジギク」(兵庫県姫路市大塩の「のじ菊の里公園」)
料亭の仲居として働き始めた寿恵子(浜辺美波)は、その話を聞きます。お金のやりくりに困っている寿恵子は万太郎に植物採集の時に菊を取ってきてもらいたいと頼みます。万太郎は「草花に優劣をつけるのは性に合わん」と言いながらも承諾しました。
そして料亭の座敷で「菊くらべ」が始まりました。次々と見事な菊が紹介されていく中で、寿恵子は万太郎が採集した「ノジギク」を披露します。しかしそれは他の菊よりも素朴で小さな白い菊です。寿恵子は万太郎の教え通りのプレゼンテーションをします。これら派手な菊たちは改良を加えられたもので日本古来の植物ではない、と。その言い草に怒り出す人もいます。
寿惠子は言いました。「ノジギクとこちらの菊たち、共にそろえば、大陸と海、それから幾星霜にも及ぶ、日本人の創意と工夫に思いをはせることができましょう」と万太郎の思いを伝えます。弥之助は寿恵子の言葉に強く心を動かされます。一等に判定したのは別の菊でしたが、ノジギクを買い取ろうとします。
過去の高知新聞連載記事から「ノジギク」について書いた回を復刻しまたので、ご覧ください。
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『淋しいひまもない 生誕150年牧野富太郎を歩く』(32)兵庫県花「ノジギク」
高知県立牧野植物園で咲く「ノジギク」
この「ノジギク」を目当てに電車を乗り継いできたのだったが、それはあっけなく、改札口近くの花壇で咲き誇り、濃密な芳香を放っていた。
JR姫路駅から私鉄に乗り換えて7駅を過ごせば、ここ「大塩駅」に着く。
兵庫県姫路市大塩は「のじぎくの里」として知られる。
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ノジギクは、牧野富太郎が22歳の年である1884(明治17)年に本県の吾川村で見いだし、命名した。山の中にあったから「野路菊」としたが、命名後に海岸沿いに多い植物であることが分かる。どうも勇み足のネーミングだったことになるが、シンプルな良い響きの名である。
1925(大正14)年、牧野はこの瀬戸内海近くにある大塩の地でノジギクの大群落を見つけ、感激する。それ以来、地域の人たちはこの花を特別に保護している。
戦後、兵庫県はノジギクを「県花」と定める。
そもそも「県花」というものは、NHKや観光連盟などが54年に企画した「郷土の花」というプロジェクトが由来となって、その多くが定められたと言われる。この選定には植物学の権威として、牧野も参加していた。
きっと牧野はきっぱり言ったのだろう。
「やはり兵庫はノジギクでしょう」
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大塩駅から15分ほど歩けば「のじ菊の里公園」だ。
昨年11月下旬、その季節にしては暖かな日だった。公園の四辺はその名の通り、無数のノジギクで囲まれ、目の覚めるような白色の花が咲き誇っていた。前日は兵庫県の最高峰「氷ノ山」の山頂で雪風にさらされていたから、早くも春を迎えたような錯覚にも陥った。
ノジギクの由来を告げる看板が公園のあちこちにあり、いずれにも「植物分類学の父・牧野富太郎博士によって命名され…」と誇らしく記されている。そんなことが、うれしい。
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ノジギクが満開を迎えていたころ、神戸市兵庫区の公会堂で牧野生誕150年を記念するシンポジウムが開かれた。
およそ250の席はほとんど埋まっていた。
会場には牧野と神戸の関わりを紹介するパネルも展示され、多くの人が熱心に見ていた。
区長、来賓のあいさつに続いて、元兵庫県生物学会会長の白岩卓巳さんが壇上に立った。演題は「牧野富太郎と神戸・会下山(えげやま)」である。
今回のシンポジウムは、この兵庫区の会下山地区の人たちが中心になって開催した。白岩さんには「牧野富太郎と神戸」(のじぎく文庫)という著書があり、その冒頭に書いている。
〈私は牧野富太郎を大成させたのは神戸との関わりがあったからであると信じています。神戸時代がなければ世界の牧野になる仕事は完成しなかったし、広がりもなかったと考えています〉
牧野と神戸。
ここをつなげるには、まず牧野の「金(かね)の使い方」から、話を始めなければならないだろう。(2013年2月14日付、社会部・竹内一)
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