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2023.08.21 08:00

小社会 翻弄

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 現在の福島県大熊町と双葉町にまたがる海岸沿いが国に接収されたのは1940(昭和15)年の春だった。現地に立つ碑には「至上命令により突如 陸軍で飛行場建設決定」とある。

 戦争の末期には「特攻」の訓練も行われ、「第一線配属若者が 御(お)国のため大空に散華す」。終戦の直前には「米軍空母艦載機の大空襲」があり、施設や各地に甚大な被害が出たという。重くつらい記録である。

 ところが、この地が国策に翻弄(ほんろう)される歴史はそれで終わらなかった。戦後は民間に払い下げられ、後に東京電力が購入。建設されたのが福島第1原発だった。88年に建立された碑が記すのはここまでだ。2011年、さらに歴史的な事故が起こるとは当時、誰が想像しただろうか。

 安全確保を約束して建設されたはずの原発の事故は政府や東電の設計や津波予測の甘さが一因であった。そのつけはいまも続く。一つが原発敷地にたまり続ける「処理水」である。

 その処理水の海洋放出開始が迫ってきた。岸田首相が現地を視察。あすにも閣僚と開始を協議する。反発するのは風評被害を懸念する漁業者だ。政府は「関係者の理解なしには(処理水の)いかなる処分もしない」と約束していたのに、ほごにするのかと。

 海洋放出以外の方法があるのかと問われれば正直、答えに窮する。だが地元の人々が未来も国策に翻弄され、つけを負わされ続けることがあってはならない。

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