2024年 05月02日(木)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

2023.08.21 08:00

【国家公務員離れ】「ブラック職場」の改善を

SHARE

 国家公務員の志望者が減少している。意欲のある若者が集まらなければ行政の質は下がり、国全体のマイナスにもなりかねない。背景の一つには「ブラック」と指摘される職場環境がある。改善を急ぐべきだ。
 2023年度春の国家公務員試験で、幹部候補のキャリア官僚になる総合職試験への申込者は1万4372人と過去2番目に少なく、倍率は7・1倍で過去最低だった。
 申込者数はピーク時の1996年の約4万5千人から減少基調が続く。また総合職のうち2019年度に自己都合で退職した20代は86人に上り、13年度比で4倍超に。若手の離職も大きな課題となっている。
 エリート官僚が国家をけん引したのはもう過去の話かもしれないが、的確な行政執行や外交交渉、政治家のフォローなど官僚の果たす役割はなお大きい。人事院の川本裕子総裁は昨年、「公務における人材確保は危機的状況で、喫緊の課題だ」との認識を示した。その通りだろう。
 志願者減少の背景には民間企業による採用活動の早期化や、長く続く売り手市場などが挙がる。人事院も手をこまねいていたわけではない。採用の前倒しや、間口を広げるための試験方法の見直しなども進めているが、効果は限定的だ。
 やはり、長時間労働などに起因する「ブラック職場」のイメージが影響しているのではないか。
 人事院の調査(21年度)では、国会対応や予算折衝、国際関係など業務量を自分で決めることが難しい本府省庁で、残業が「月の残業100時間未満」「年間で720時間以下」などの基準を一つでも超えた職員の割合は約16%に上った。
 職員の残業が一気に増えるのは国会開会中だ。職員らは政府答弁の作成業務を負う。与野党の議員が国会での質問内容を事前に政府に伝える「質問通告」は、本来なら2日前の正午までとの申し合わせがある。だが、先の通常国会で通告が出そろったのは前日の午後6時26分だった。改善傾向に乏しい。
 これでは職員は仕事のモチベーションが上がらず、家庭との両立、専門知識の習得などを目指す上でも支障が生じよう。
 通告の遅れは国会議員側の問題であり、議員側は責任を自覚する必要がある。人事院も給与アップや「選択的週休3日」の拡大など働き方改革を矢継ぎ早に打ち出している。現場のニーズをくみ取り、早期に組織運営に反映させていくべきだ。
 内閣人事局が設置され、官邸機能が強化されたことも影響がないとは言えまい。縦割り行政の解消や政策決定の迅速化には効果があったが、官僚から「自由に物が言えなくなった」との不満も聞こえてくる。
 政権幹部に忖度(そんたく)し、公文書を改ざんする不祥事も起きた。こうしたことが続けば、官僚が自分の仕事に誇りを持つことは難しい。
 「若者の官僚離れ」は、組織のゆがみやいびつさを映し出す。組織に根付いた体質、風土にもしっかりとメスを入れるべきだ。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月