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2023.08.19 08:00

【GDP6%成長】暮らしに実感は乏しい

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 景気は国内総生産(GDP)が示すほどの力強さを実感できない。物価高が暮らしにのしかかる。経済回復を本格軌道に乗せ、継続的な賃上げへとつなげていかなければ先行きは楽観できない。
 2023年4~6月期の実質GDPは前期比年率換算で6・0%増と、市場予想を大きく上回った。プラス成長は3四半期連続となる。
 半導体の供給制約が緩和した自動車などの輸出が伸びた。統計上は輸出に区分されるインバウンド(訪日客)消費の拡大も寄与した。輸入は原油や医薬品などが減ったが、統計上はプラスに作用した。
 景気実感に近いとされる名目GDPは前期比年率12・0%増と高い伸びで、金額も過去最高となった。だが、成長率を押し上げたのは物価高騰の影響が大きく、その数値の実感は景気の熱気というより家計の厳しさに向けられる。
 個人消費は物価高に直撃されて盛り上がらず、3四半期ぶりのマイナスとなった。新型コロナウイルス禍から立ち直る外食や宿泊は伸びている。しかし、原材料費の上昇などで値上げが相次ぐ食料品や白物家電が落ち込んだ。
 消費者物価は2年以上、前年同月を上回っている。賃上げは物価上昇に追いつかず、実質賃金は減少が続く。消費行動は使うところと削るところのまだら模様を描きながら、生活防衛の意識を強めていることを映し出すようだ。
 また、設備投資も横ばいで力強さを欠いている。企業心理には、先行きを見極めようとする慎重姿勢がうかがえる。
 GDPを押し上げたのは輸出から輸入を差し引いた外需で、個人消費や設備投資など内需のマイナス分を補った。しかし、その外需にも変調の兆しが強まっている。
 7月の貿易収支は2カ月ぶりの赤字となり、黒字基調へ移行する勢いの乏しさを印象づけた。輸出が2年5カ月ぶりに減少した。中国経済の回復が遅れていることが響いた。欧米向けは伸びたものの、インフレ対策の利上げが経済減速につながらないか警戒が怠れない。
 今回、統計上プラスに寄与した輸入の減少は、そもそも内需の弱さや生産の伸び悩みが影響したとの指摘がある。見せかけと評される高成長の一面でもある。成長の力強さを獲得する工夫が不可欠だ。
 企業活動の懸念材料にはほかにも、人手不足や人件費の増加も加わる。原材料費の高騰を円滑な価格転嫁で補えなければ負担は増す。最近の円安がまた物価に影響する。
 コロナ対策の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済本格化も重い。倒産が増えるようでは雇用や地域社会に影響する。細やかな施策で対応する必要がある。
 企業業績の向上を家計の所得環境の改善につなげ、消費を増加させて企業の景況感を明るくする。物価と賃金が安定的に上昇するにはまだ時間がかかるとみられるが、堅実な取り組みで好循環を得たい。

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