2023.08.19 08:00
小社会 阪神のアレ
戦後間もなくファンになったという。旧制高校のバーバリズム(野蛮、野性味)を感じさせるダイナマイト打線。それに心もとない投手陣による負けっぷりの良さが同居する。「生来の天邪鬼(あまのじゃく)も手伝って」強くひかれた。
著書「マンボウ阪神狂時代」には、虎党も納得しそうな名言がある。優勝しても「次」まで21年、18年とあく。阪神の優勝は「忘れた頃にやってくる」。優勝という言葉はタブー。「口にした時点で消えていく」
今季の阪神は好調。先日、セ・リーグ優勝への初のマジックナンバーが点灯した。興味深いのは岡田彰布監督も就任以来、優勝という言葉を封印していること。「アレ」としか言わない。
好調の要因には、監督交代に伴う守備位置の変更がいわれる。これで不遇から再生した選手も。牧野富太郎博士の都々逸(どどいつ)、〈沈む木の葉も流れの具合浮かぶその瀬もないじゃない〉を思う組織の人材活用か。ともあれ、マジックはついたり消えたりするもの。まだまだ他球団も諦める時期ではあるまい。
北さんは、うまくいき過ぎではと「勝てば勝つほど不安が増える」とも。そんな虎党も含めて野球を楽しめる季節は続く。