2023.08.18 05:00
まれにピタリと一致 あふれる数、足りない数【数からの挑戦状#5】★解説動画連動★
完全数
数学の世界にある、いまだに解けない問題や不思議な法則を、科学ライターの井筒智彦さんが毎月紹介します。古代から現代まで、人類が数と格闘した歴史も垣間見えます。
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12や20は、あふれています。38や39は、足りていません。ただ40になると、あふれます。
年齢と気力の関係?
そうではなく、数そのものの特徴の話です。
ある数に対して、それを割り切る数を「約数」といいます。例えば、12の約数は、1・2・3・4・6・12です。
ここで次の計算をしてみましょう。
「自分自身以外の約数をすべて足し合わせる」
表に例を載せています。
計算をして、元の数を上回るものを「過剰数」、下回るものを「不足数」といいます。
ごくまれに、過不足なくピタリと一致するものがあります。その数を「完全数」といいます。
古代ギリシャの数学者ピタゴラスが名付けたとされます。
完全数は紀元前から研究されていますが、現在までにわずか50個を超えるほどしか見つかっていません。不思議なことに、全て偶数です。
奇数の完全数はあるのか、完全数はどれだけあるのかは、未解決の問題です。いまも数学者が研究しています。
「友愛数」という数もあります。数Aについて先ほどの足し算をした結果が数Bになり、逆に数Bの計算結果が数Aになります。220と284がその一例です。
他には「社交数」や「婚約数」という数もあるそうです。
数にも交友関係があるなんて面白いですね。
実は、貴重な存在である完全数は、20から30までの中に一つ隠れています。ぜひ探してみてくださいね。そんなに大変ではないので、途中で不完全燃焼しませんように。
(文・科学ライター・井筒智彦、監修・谷口隆神戸大大学院教授)
※井筒さんが出演して、より分かりやすく解説している動画があります。YouTubeで「数からの挑戦状」と検索してみてください。
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いづつ・ともひこ 1985年東京都生まれ。東京大大学院博士課程修了。宇宙プラズマの乱流輸送現象を世界で初めて実証。米航空宇宙局(NASA)人工衛星の解析チーム入りを辞退し、広島県北広島町に移住。「限界集落から宇宙へ」を合言葉に町おこしに取り組む。
たにぐち・たかし 1977年兵庫県生まれ。東京大大学院博士課程修了。プリンストン大客員研究員などを経て神戸大大学院理学研究科数学専攻教授。専門は整数論。著書に「子どもの算数、なんでそうなる?」(岩波書店)。
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