2023.08.17 08:00
小社会 大火と復興
何せ人口は100万人を超え、木造家屋が密集していたから、延焼を食い止めるのはなかなか難しい。度々、多くの死者を出す惨事になった。庶民はいつでも身一つで逃げられる用心をしていたという(石井明著「江戸の風俗事典」)。
火事とけんかは江戸の華という。確かに江戸っ子の「意気」を言い表していよう。ただ、けんかはまだしも災難が華とは。江戸っ子は「江戸の名物」と強がってみせることで、生活再建へ自らを鼓舞した面があったのかもしれない。
米ハワイのマウイ島で大規模な火災が発生して1週間余りが過ぎた。確認された死者は100人を超えたが、被害の全容がつかめない。ハワイ王国の首都だったラハイナは壊滅的被害で、歴史的な建造物も灰と化した。
一変した南国の楽園。地元住民はこれまでの生活基盤に加えて、地域のアイデンティティーに関わる文化財までも失った。復興には少なくとも8千億円に上る費用、5~8年の時間を要するという試算も出ている。
厳しい現実に、今は茫然(ぼうぜん)自失だろう。でも、江戸っ子が大火の度に江戸を復興したように、楽園も再建できるはずだ。ハワイ人の心意気を後押ししたい。