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2023.08.17 08:00

【高知の最賃上げ】中小支援の重要性が増す

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 物価が高騰する中、働く人が安心して暮らせる賃金水準は不可欠だ。同時に経営の安定に寄与する環境整備が求められる。多彩な取り組みで地域の活力につなげたい。
 高知県の2023年度の最低賃金を時給897円とするよう、高知地方最低賃金審議会が答申した。44円の引き上げで、比較が可能な02年以降で最大となる。上げ幅は、国の中央審議会が示した目安額を5円上回る見通しとなった。労働側の主張をより取り込んだ決着と映る。
 新型コロナウイルス禍からの経済活動の再開や、ロシアのウクライナ侵攻で物価が高騰した。消費者物価は2年近く前年同月を上回る。しかし賃金の伸びは物価の上昇に追いつかず、実質賃金はマイナスが続いている。
 政府は23年度の物価上昇率を前年度比2・6%と見込む。年初の見通しから上方修正した。家計が圧迫され、生活費を切り詰めざるを得ない状況が続きそうだ。安定的な賃上げの必要性が増している。
 今春闘での賃上げは高水準だった。その持続と、幅広い波及が求められる。最低賃金の引き上げを、生活の向上と消費活動の改善につなげていくことが求められる。
 一方、物価高や人件費の上昇は企業経営への影響が避けられない。原材料費の高騰が収益を圧迫する。上昇分の価格転嫁が円滑にできているわけではない。これらが持続的な賃上げを困難にする。
 新型コロナ下で中小企業の資金繰りを支えた実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が本格化している。行き詰まる企業が増えないか警戒感が強まる。資金繰りへの目配りを怠れない。人手不足も深刻だ。宿泊や飲食業などで、コロナ禍からの人出の回復をうまく取り込めない事例も報告される。
 また、社会保険料負担の発生を避けるために働く時間を抑える「年収の壁」が立ちはだかる。時給が上がると人手不足に拍車がかかりかねない。政府は助成を検討するが、抜本的な対応は先送りされている。向き合うべき課題は多い。
 最低賃金を巡っては、地域間格差の是正も重要な論点だ。中央審は、経済情勢に応じて提示してきた目安額の区分を4から3に減らした。中間層を増やし、全体の賃金水準の底上げを目指そうとする姿勢は間違ってはいない。
 しかし、目安額の段階で差をつけるようでは、格差の拡大を容認していると受け取られても仕方ないだろう。経済事情の違いを乗り越える方策を探る必要がある。
 全国最低グループだった高知は、先に審議を終えている数県を上回った。また、東京との差は目安額では広がりかねなかったが、高知の上積みで縮まった。とはいえ依然として216円ある。
 賃金格差が大都市部への人口流出の一因との見方は根強い。人口の減少を加速させるようでは地域経済の活力にも影響する。地域の維持とも密接に関係する問題だ。

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