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2023.08.03 08:00

小社会 武器の落とし穴

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 20世紀とはどんな時代だったのか。大きな特徴は武器を、それも機関銃から核に至るまで大量殺りく兵器を各国が競うように造ったこと。7日に生誕100年を迎える作家、故司馬遼太郎さんが以前、対談で語っていた(「時代の風音」)。

 100年間で1億人ほども殺したとされるが、なぜ人類はそれほど武器が好きなのか。司馬さんは言う。人殺しの道具でありながら、武器こそ進歩の証しであり文明だ―そう思うところに人間の暗い落とし穴がある、と。

 21世紀も武器の時代は続く。殺傷能力のある武器を搭載した防衛装備品の輸出解禁へ、岸田首相がかじを切ろうとしている。武器輸出三原則で原則輸出を禁じていたのを、安倍政権当時、非戦闘分野に限って容認。さらに殺傷武器の解禁により輸出の道は広がる。

 背景にはロシアのウクライナ侵攻がある。武力攻撃される国を救うためなら大義名分が立つというわけだが、紛争地への武器の提供は間接的であっても戦禍の拡大に関与しかねない。

 いくら最新兵器を持っても、相手はより多くの人を殺せる兵器を手にするかもしれない。増やせば増やすほどかえって不安が強まる。武器からはそんな人間性の弱さも感じられよう。

 戦場で誰一人殺すことなく平和の道を歩む―戦後の廃虚から先人が立ち直りを目指した新生日本。その在り方こそ人間が「暗い落とし穴」から抜け出すための、かすかな道筋でもある。

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