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2023.07.31 08:35

夢は「近所のお兄ちゃん」 タレント・モデル SUKEさん(24)土佐市―ただ今修業中

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ヒーローインタビューに力が入るSUKEさん。「もっと選手にしゃべってもらえるように、引き出し方を鍛えたい」(高知市大原町の高知球場)

ヒーローインタビューに力が入るSUKEさん。「もっと選手にしゃべってもらえるように、引き出し方を鍛えたい」(高知市大原町の高知球場)


 僕は僕なんだ。「自分にしかできないことをしてみたい」。歩む道に悩んでいた青年は今、勝利の熱気冷めやらぬ夜の高知球場に立っている。

 「今日のヒーローはこのお二人です!」。高知ファイティングドッグス(FD)がホーム戦を制し、ファンが集うスタンドに向けてSUKEさん(24)=本名・坂上友介=がヒーローインタビューを届ける。軽快なやりとりとは裏腹に、「選手の声をもっと引き出したい。まだまだです」と困ったように笑う。今は夢への道の途中にいる。 

 ◆

 小さい頃からずっと、自分に自信がなかった。やりたいこと、欲しい物、本当の気持ち…。素の自分を表に出せず、物分かりのいい、「いい子」の皮をかぶった。保護者を交えた学校の面談で、「どうしたらこんな素晴らしいお子さんに育つんでしょうか」と先生に褒められ、「本当の自分じゃないのに…」と落ち込んだこともあった。

 高校進学を機に育った三重県を離れ、両親のふるさとである高知県へ。20歳くらいの頃、人生を変える経験をした。「ウエディング写真のモデルになってくれない?」と知り合いから頼まれた。断ることもできたのに、「やってみます!」。自信もないのになぜ了承したのかは分からない。「思い切ってやってみたい」と飛び込んでいた。

 初めはぎこちなかった表情が、自然な笑みに変わっていく。写真が企業のイメージ広告に使われたり、交流サイト(SNS)で発信されたり。「自分でもいいんだって、誇らしくなりました」。もがきながらも、自らを閉じ込めていた殻に穴があく。「表現するのが楽しいって思えた。いつの間にか殻を破って自信になっていました」

 就職活動中も、「自分にしかできない何かをしたい」という思いが消えなかった。後ろ髪を引かれるようにモデルをした写真を見返していた時、花嫁役の女性が高知市内の芸能事務所の所属だと知った。気づけば熱い思いをしたためたメールを事務所へ送り、新しい世界へ踏み出していた。

 ◆

 FD戦のスタジアムDJは、今シーズンから担当する「初のレギュラー」。質問用紙を準備して臨んでいたヒーローインタビューだったが、「事務的になっていた。やりとりの中で選手の声を聞き出せるようになりたい」とカンペをやめた。

 ある時、選手がお立ち台で「最高です!」しか言わないことがあった。焦った。ただ、すぐピンと来た。「これはWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での(巨人の)岡本和真選手のオマージュだ」。選手がテンポよく、「最高です」と叫べるよう、答えやすい質問をポンポン投げかけた。「最高です!」が何度も球場に響き、ファンが盛り上がる楽しい雰囲気をつくることができた。

 ヒーローインタビューをはじめ、グラウンド整備中に行うイベントの進行は瞬発力が求められる。「相手を立てながら、自分の色を出せるようになりたい。僕だから引き出せる言葉を増やしていきたい」と熱がこもる。

好きな言葉

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 今の目標は、県内を巡り、地域の人の隣で話しながら魅力を発信する「近所のお兄ちゃん」のようなタレントになること。そんな姿を夢見る「僕」の元気な声が今日も球場を包み込む。

 「みなさん、こんばんは!」

  写真・森本敦士
  文・平野愛弓

高知のニュース 土佐市 ただ今修業中 ひと・人物

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