2023.07.29 08:30
車道に大鳥居なぜ? 戦前は歩道、車普及で市道に【なるほど!こうち取材班 パートナー紙とともに】
藤崎八旛宮の参道と国道3号の交差点。写真左端の左折レーンが、特に幅が狭くなっている=熊本市(画像の一部を加工しています)
大鳥居は境内から続く車道と国道3号の交差点に立つ。コンクリート製で高さ、幅はともに10メートルほど。鳥居の下は2本の柱を避けるように、片側2車線が通っている。
S編に投稿した男性(55)は以前、中型トラックで鳥居の下を通ったが「参道から国道3号への左折レーンが狭くて通れず、直進するしかなかった。公道として問題はないのか」とした。左折レーンの柱と歩道の間を測ってみると狭い所で約1・9メートル。普通車は通れるが、柱には車でこすったような黒い跡も残っていた。
藤崎宮を訪ねた。「鳥居と車道の形状が珍しいという指摘は時々あります。まずは鳥居ができた当時の写真を見て下さい」。権禰宜(ごんねぎ)の藤岡敬士さん(41)が1枚の白黒写真を見せてくれた。
藤崎宮は明治時代、西南戦争をきっかけに熊本城の隣接地の藤崎台から現在地に移転した。大鳥居が完成した年月の正確な記録はないが、社殿などの増築が始まった1935年より少し前だったという。当時の参道は未舗装で土がむき出しの「歩道」だった。
「車道」の整備は戦後の1964年のこと。熊本市に参道の土地を無償で貸す形で市道となった。藤岡さんは「戦後復興や参道周辺の宅地開発、車の普及に合わせて、参道を生活道として使う需要が高まり、鳥居を避ける形で車道を整備したのでは」とした。
熊本市土木総務課によると、交通量の多い私道などを住民の要望で市道に認定するケースはある。その場合、土地は市に寄付する形が一般的だ。一方、市が民間の土地を借りて市道として管理しているのは、藤崎宮と健軍神社(東区)の参道の2例のみという。
車道の幅員は国の道路構造令に基準があり、交通量の少ない生活道路の場合は1車線2メートル以上。しかし地形や地域の状況に応じて個別に設定することは可能で「現状の幅員で法令上も問題ない」という。(熊本日日新聞)
県民・読者とつくる調査報道企画、高知新聞「なるほど!こうち取材班」(なるこ取材班)。連携する全国のパートナー紙の記事や県内の状況を随時掲載で紹介します。
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