2024年 04月29日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.07.29 08:30

地震保険料 地域でなぜ違う? 被害予測基に料率算出【なるほど!こうち取材班 パートナー紙とともに】

SHARE


 日常生活の身近な疑問に答える静岡新聞「NEXT特捜隊」に、藤枝市の50代女性から「静岡県の地震保険料が高くて驚いた。価格設定の基準や見直しのタイミングはどのように決まっているの?」との質問が届いた。南海トラフ巨大地震などが危惧される静岡県の保険料が高いのは知られているが、5月に石川県で観測した震度6強など全国各地で続く地震活動は保険料にどの程度反映されるのか。地震保険料を決める際の基礎となる基準料率は、損害保険各社が法律に基づいてつくる「損害保険料率算出機構」(東京)が算出している。考え方を聞いた。

■所在地と建築構造
 地震保険の基本的な料率は、契約の対象となる建物の所在地と建築構造によって異なる。例えば静岡県所在で、耐火・準耐火性能を有する建物「イ構造」の料率は保険金額千円につき2・75円なのに対し、イ構造以外の建物を指す「ロ構造」の料率は4・11円。石川県の料率はイ構造が0・73円、ロ構造が1・12円で、静岡とは3倍程度の開きがある。全国的に見ると東北から九州の太平洋岸の基準料率が高く、日本海側は低い。

 格差が生じる要因となるのが基準料率の算出方法だ。基礎となるのは政府の地震調査研究推進本部が公表している「確率論的地震動予測地図」。この地図の作成に使われた発生が見込まれる地震の規模、平均発生間隔などの震源データを基にコンピューター上で仮想の地震を起こし、各地域の建物の状況や地盤特性を加味して建物の損壊、火災、津波などの被害を予測する。この予測から将来の保険金の支払額を導き、料率を算出しているという。

■3段階でリスク反映
 建物の所在地別の地震発生リスクは3段階の区分で料率に反映される。現在はリスクが最も高い「3等地」は静岡県や高知県など8都県、「2等地」は11府県、「1等地」は28道府県。料率は等地ごとに同一水準となるよう調整する。南海トラフ巨大地震の被害が予想される地域でも等地が異なるのは、同地震以外にも発生が予想される地震はあり、住宅密集率など地域ごとの状況が異なるためという。

 同機構火災・地震・傷害保険部の担当者によると、「地震は火災などに比べ発生頻度が低い上、発生時期が不規則で巨大な損害をもたらすのが特徴」。このため、発生した地震をすぐに被害予測や基準料率へ反映させるのは難しいという。ただ、各地の地震活動を基に予測地図そのものが見直されることがあれば「料率も適切に改定していく」と語る。料率の妥当性については毎年検証を行って金融庁長官に報告し、改定が必要な場合は同長官に届け出て適合性審査を受けるなど公正さを確保する仕組みを設けている。

 地震の発生確率の上昇に伴い、料率は徐々に上がってきたが、直近の2021年の改定では耐震化の進展などを背景に全国平均で0・7%の引き下げとなった。耐震性の高い住宅の普及や防潮堤の整備など防災インフラの拡充が進めば予想される被害が減るため、引き下げの要因になり得るという。(静岡新聞)

高知は付帯率全国2位
 地震保険は都道府県ごとに料率が異なる。南海トラフ地震が迫る高知県は、静岡などと地震発生リスクが最も高い「3等地」に分類され、「イ構造」の料率は保険金額千円につき2・3円、「ロ構造」は4・11円になっている。

 地震保険は火災保険に付帯して契約する仕組み。損害保険料率算出機構によると、県内で2021年度に火災保険を新たに契約した人のうち、地震保険を付帯した人の割合は87・8%。全国平均の69%を大きく上回り、宮城県(88・7%)に次いで全国2位となっている。

 一方、地震保険の世帯加入率(21年)は28・1%。10年前と比べ5・7ポイント上昇したものの、全国平均の34・6%を下回っている。

 日本損害保険協会高知損保会の海野(うんの)雅敬会長(49)は県内の加入率について、「損保会社の地震保険ではなく、共済に入っている人が多いという要因もあるのでは? 付帯率の高さは地震リスクを身近に感じるようになったからでしょう」と指摘。「地震保険は損害額の細かい見積もりがいらず、保険金を早く払える」と利点を挙げて、加入を勧めている。(山崎彩加)


 県民・読者とつくる調査報道企画、高知新聞「なるほど!こうち取材班」(なるこ取材班)。連携する全国のパートナー紙の記事や県内の状況を随時掲載で紹介します。

なるほど!こうち取材班への情報提供はこちらから

高知のニュース なるほど!こうち取材班 防災・災害

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月