2023.07.27 08:39
マイナンバーカード 「トラブル続き不安」「実質強制」反発も 高知新聞LINE調査【なるほど!こうち取材班】
総務省などによるマイナンバーカードの出張申請受付キャンペーン(2022年6月、高知市内)
アンケートは24~26日、なるこ取材班のLINEアカウントに友だち登録している約1400人に実施し、191人が回答した。このうちカードを取得していると答えた人は約75%(144人)。一般的な無作為抽出の世論調査とは異なるが、マイナカードに「不安はあるか」との問いに「大いにある」「少しある」と答えた人が8割近くに上った=図参照。
ポイント目当て
カードの取得理由を大まかに分類すると、約4割が「マイナポイントがもらえるから」と答えた。
最大2万円分がもらえる「マイナポイント第2弾」が昨年6月に全面スタートすると県内でも申請が増加。高知市の50代男性会社員は「気乗りはしなかったが、妻の主導で4人家族全員が取得した。免許証や健康保険証も一緒にしてほしい」とつづった。
「顔写真付きの身分証がないので」「健康保険証と一体化されるから」といった声のほか、カードの利便性の向上を理由に挙げる人も多く、いの町の40代女性公務員は「子ども関係のオンライン申請や役所の時間外にコンビニでの証明書が取得できるようになって助かっている」と歓迎する。
一方、未取得の人は、トラブルへの政府対応や制度そのものへの不満を挙げる人が目立ち、「必要性を感じない」「情報漏えいが心配」との声も根強かった。
後出しじゃんけん
政府が個人番号の利用分野拡大を図る一方で、他人の情報をひも付けるなど次から次へと不備が明らかになる中、取得状況にかかわらず、カードの普及や活用に不安を覚える人は多い。
健康保険証とマイナカードが一体化した「マイナ保険証」の本格運用が始まった2021年10月以降、同姓同名などの別人の医療情報が登録された事例が約7400件判明。宿毛市で喫茶店を営む女性は「住民票の取得や公金の受け取りに便利かと思って」カードを取得したが、「同姓同名の人が市内に3人いるので不安」と心配する。
高知市の40代事務職の女性は「保険証や免許証をなくすなら、常に持ち歩かないといけないので紛失が心配。ひも付け情報が間違いだらけで、信頼されていないのに押し通すと、余計に信頼を失う」と不満げ。高知市の20代男性団体職員は「保険証との一体化で、本人確認の面で不正利用が減るなどのメリットがある。政府は不安を一刻も早く払拭して」と信頼回復に向けた取り組みを求めた。
「マイナ保険証」については医療現場から異論も。高知市の医療事務の50代女性は「仕事上、保険証の種類の確認が必須だが、カードを提示されても一目で分からないので不便。いざ、システムで確認しても情報がひも付けされていなかったりして手間がかかる」と疑問視。顔認証やパスワード入力に抵抗のある高齢者も多いと指摘する。
香美市の50代女性公務員は、地方交付税の配分にカードの普及状況を反映させる政府方針に「ひどいやり方だ」と反発。「必要性を丁寧に伝えず、保険証や口座との連携を急いだのは失敗。紙の保険証がなくなるという情報が後出しじゃんけんのように出てきて一層不信感につながった」と突き放した。(大野泰士)
マイナンバーカード 国内に住む全ての人に割り当てられた12桁のマイナンバー(個人番号)と顔写真や氏名、住所などが記載される。ICチップが内蔵されており、オンラインで行政手続きをする際の本人証明などに使い、健康保険証としても利用できる。取得は任意。県内保有率(6月末)は67.1%で、全国で3番目に低い。マイナ保険証関連の誤登録のほか、公金受取口座を巡っては、自治体窓口の担当者がマイナンバーのひも付けを誤り、個人情報を含む銀行口座の情報が漏えい。デジタル庁に立ち入り検査が入った。高知市では4~6月、制度やセキュリティー、必要性への疑問を理由にしたカードの自主返納が16件あった。