2024年 05月02日(木)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

2023.07.22 08:37

緻密な鉛筆画、圧倒的 吉村芳生回顧展「超絶技巧を超えて」が開幕 8/27まで、高知県立美術館

SHARE

全長7メートルに及ぶ藤の鉛筆画などに来場者が見入った(高知市の県立美術館=森本敦士撮影)

全長7メートルに及ぶ藤の鉛筆画などに来場者が見入った(高知市の県立美術館=森本敦士撮影)


 花や新聞紙、自分自身などをモチーフに、鉛筆で独自の細密描写を探求した画家、吉村芳生さん(1950~2013年)の回顧展「超絶技巧を超えて」が21日、高知市高須の県立美術館で開幕した。緻密な手業と、創作への真摯(しんし)な姿勢が伝わる約320点が並び、来場者は圧倒されるように見入っている。8月27日まで。

 吉村さんは山口県出身。山口芸術短期大学や創形美術学校で学び、版画とドローイングの作家としてデビューした。地元で作家活動や講師の仕事をする傍ら、各地の展覧会に出品。07年、東京・森美術館での展示を機に大きな注目を集め、6年後に亡くなるまで精力的に創作に励んだ。

 展示の前半はモノクロが中心。金網が延々と17メートル続く無機質な作品は、金網と紙をプレス機にかけ、紙に残った跡を70日間かけてなぞったもの。また、対象物を撮った写真を引き伸ばして細かなマス目を引き、1マスずつ機械的に模写する方法などで作画。新聞紙を書き写した絵に、自分の顔を描き重ねるなど、ユニークな手法にも挑戦した。

 後半は作風が変わり、色鉛筆による彩り豊かな花の絵が並ぶ。東日本大震災を受けて制作した「無数の輝く生命に捧(ささ)ぐ」は、発光するような花盛りの藤の木に、鎮魂への強い思いが凝縮されている。

 訪れた人は「本当に写真みたい。気が遠うなる仕事やね」「でも温かみがある」と目を凝らして驚きながら鑑賞。足達恵美さん(81)=高知市=は「並の気持ちでは描けないような根気にすごみを感じました」と話していた。

 高知新聞社、RKC高知放送の主催。(徳澄裕子)

高知のニュース 高知市 美術・アート

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月