2023.07.16 08:00
小社会 4年ぶりの開会式
リーダーの水野良樹さんは、かつて野球少年だった。ところが中学3年の春、野球部の主将として後輩の指導にてこずっていると、顧問が「殴っちまえばいいんだ」。いまの時代なら考えられない発言だが、人を殴るぐらいならば、と野球をやめたという。
20年以上たって文章に残すほどだ。つらく、あきらめた夢は大きかったのだろう。次に向かった夢が音楽の道。グループは人気を博し、自分の曲が春のセンバツを彩った。「夢の余熱を、心のなかで少しだけ昇華することができた」
水野さんは著書「誰が、夢を見るのか」にこう書く。つらい気持ちを抱える少年少女に、たまたま苦境から逃れることができた人間の希望を押し付けたくない。ただ、「物語はいつも〝途中である〟…まだ結末ではない」
きのう春野球場に足を運んだ。コロナ禍があって、夏の高知大会の開会式は4年ぶり。行進曲に乗って伝統校も連合チームも堂々とゆく。彼らも中学、高校と活動に制約を受けた世代になる。「この夏に懸ける思いは特別です」。選手宣誓が印象に残った。
力を出し切れなかった敗戦も悔いの残るプレーもあるだろう。だが、気にすることはない。物語はまだ途中だから。